ナポリにあるサルトの聖地たる所で創業されたカミチェリア。
現在、父ジュゼッペの後をマリオという2代目が継いでおり、
名は「マリオ・ムスカリエッロ」。
09年からはジャケットも製造しているので、軽やかなシャツジャケットでご存知の方も多い。
何よりここはチリエッロ同様にカプリシャツ(主にリネン地の7分袖プルオーバー)が有名で、
リゾート気分満開の鮮やかな柄モノなどがよく店頭に並んでいる。
一方で数年前相場で言えば、ここのシャツは2万円後半の割にはコストパフォーマンスに優れている。
残念ながら現在は更に優れたものが出てきており、ムスカリエッロ自体値上がりしたので何とも言えないが。
大抵「9工程のハンド仕上げ」とあるが、それは確か。
共地のチーフが付いてきたりもする。
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特筆すべきところが目立ってないのだが、個人的にはコストパフォーマンスを考えると
ディティールの凝りようではボレッリを超えていると思う。
(使用している生地も含めると判断保留となる)
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鳥足留めではなく四角留め。
薄目のボタンなので別に鳥足の必要はない。
というか四角留めの方も手間がかかると思う。
白蝶貝。
それよりも、台襟の手縫いでの付け方に興味がある。
前立て部分の曲線に沿うようにいせ込んで(?)いるのがわかる。
台襟を広げた時、襟先が一直線ではなく上に自然に上がるシャツは、
人間の首の立体に沿ってそのようになっているわけで、これは良いシャツの判断基準の一つとなる。
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ボタンの根巻。
鳥足留めだって根巻だって今は機械でできるんだから手付けのメリットは無いのかもしれない。
けれどハンドのボタンホールの裏側と同じように、手仕事の良さはある。
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袖先へのカフ付も襟同様に立体的。
一般のナポリシャツがスルーする柄合わせも手ぬかりなくきっちりと行われている。
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今更ここを見るのもなんだかという気がするが、
当然きっちり。
フィナモレのようにグイグイ来る曲線ではないが、
控えめに身頃に食い込む。
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ここも曲線が上手で、畳もうとすると妙な皺が寄る。
柄もきっちり。
ボレッリを思い出す。
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なべてお見事としかいいようがない。
剣ボロ柄なんかはボレッリでさえ合っていないし、
いくらかナポリ系シャツよりスリムにできているのが個人的に気に入っている。
そして今では上がってしまったがそれを2万後半のクラスで実現していたのが凄い。
今思ったけどムスカリエッロとボレッリってラストネームだけ取ればマリオ&ルイージだ。
土管工、物凄い手練れのアルティジャーノなんだな。