定番のタブカラーで、ケリーカラーと言われるシャツ。
S.E.H KELLY自体はイギリスのブランドで、10年前にはじまったばかりのブランド。イギリスの素材でイギリス国内で生産を行っているのが特徴。個人的にドンズバで好きな生地を使ってくるなという印象。フランクリーダーと似た印象で語られる。重いピンポイントアイリッシュリネンなど。
これはコットンウール。冬用のネルシャツのようだがそこまで厚くはない。副資材のボタンは大きめのものだがそのバランスがアーミッシュな感じというか、イギリスビンテージっぽさを添えている。
S.E.H KELLYの作り手は二人。ITのキャリアから入ってきたポール・ヴィンセントと、サヴィルロウの仕立て屋のキャリアがあるサラ・ケリーの夫婦。ナードな見た目のポールがデザイナー、眼鏡輝くケリーがパタンナーというスタンスの様子。シーズンごとにトレンドから影響を受けないように意図的に情報を選択しており、また英国産にこだわるというルールも厳格。
サヴィル・ロウの「仕立て服」のみが発注している職人や工場を、日常のカジュアルウェアを作る時に使う、という(たぶんポールの)アイデアが出発点になっているらしい。
英国生産というとbespoken、1205もあるが、「英国製」「仕立て屋の歴史」「サヴィルロウ」と三拍子揃うとe.tautzを思い出す。しかしドレスアイテムを基本としてカジュアルダウンしているイートウツと比べ、こちらはカジュアルアイテムをドレスの技術や調達で表現するスタンス、と異なる。クラシックな雰囲気があるにはあるのだが、アーミッシュ的というか、いかにも「長い年月に耐える」という点にフォーカスされた生地、縫製、カラーパレット、デザインだ。
ポールは10代のころからめちゃくちゃ服を買っていたらしいが、そのあたりもイートウツのデザイナー、パトリックを彷彿とさせる。でも個人的にはポールのほうが親近感を感じる。イートウツのパトリック・グラントも相当服を買っていたらしいが、なんとなくだがポールは買い方がマニアックなのではと思う。「へーこの生地もうこの工場しか織れへんのや…買っとこ」「えっこの縫製方法どうなってんのこれ…?買っとこ」みたいな買い方をしてそう。少なくともこのインタビューからはそう感じ取った。(どうでもいいけど中盤のコートの襟の画像、生地が気になる)
ケリーカラーと言われるこのブランドのアイコニックなタブカラーデザイン。マルジェラのシャツを彷彿とさせたが、ビンテージをよくソースに使うそうなので昔のディティールにあったものかもしれない。
当然だが面倒なディティールはやっていない。そういうシャツではない。この辺、いくらマニアックでも日本人とは違うなと思う。ただ縫製は丈夫な生地を扱う事が多いからか、しっかりしている。デザイナーの「長い間着て欲しい」という意志が詰まっているとわかる。
今は生産背景の問題(これってなんなの?)から日本への入荷が休止しているらしく、早く再開してほしいブランドの一つだ。
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