時にはだれかを愛するなら、他人でいたほうがいい

ブレードランナー2049
生地はDUGDALEのツイードだったかな

さーて、今週のベンガルさんは?
◆アナトミカのシングルラグランコート2、全肯定できないけど良いです
◆でも20万越えで高い、マッキンで良いのでは
◆ソースはビンテージバーバリーバルマカーン、一枚袖。

というわけで今でも手に入る定番、アナトミカのシングルラグランコート。の2。

袖も身頃もボリュームがある
きれいすっきり足がさばける。ピエール・フルニエ的にはコートは大股で歩くことを美としているそうなので、必然的に蹴回しは多く取らざるを得ず、Aラインが前提となる

泣く子も黙る定番コート。何を今更?という感じだが、ここに至るまで色々あった。私は比翼という仕様が嫌いだ。同様に嫌いなボタンフライ仕様だからという理由で、気に入っているパンツもクローゼットから根絶する人間である。そんな人間は比翼を選べない。したがって数あるアナトミカのSRシリーズから選ぶのはSINGLE RAGLAN2、略してSR2。SR7の東京店10周年モデルのローデン生地も気になったけど、汎用性からこちら。

工場はどうせサンヨーソーイング。もち青森。というかこんな仕様で数を縫える工場がその他にない。このシングルラグラン2、とにかくテーラーやビスポーク職人に「それいいっすね、どこのすか」と言われる事が多い。それだけ完成度が高いのだろう。コートは生地の落ち方がつくるシルエットが命だと思っているが、それほどアクの強い主張もなく、涼し気に下る。

貫通ポケット。レインコートの名残りがどうの、と聞くが、ロマンがある。個人的には貫通ポケットとマガジンポケットの組み合わせが好きだが、中々市場にない。まあリバーシブルなので仕方ない…
まあリバーシブルだから仕方ないか…と当初思っていたが、最近はむしろこの仕様が面白いと思うようになってきている
この仕様は気に入らない
裾から伺えるリバーシブルの内情。ちゃんと翻った時に見える生地も計算されている

それにつくりがしっかりしている。からサンヨーソーイングでしょう。COBY FACTORYのトレンチやGRENFELLのコートを着てきたが、同等かそれ以上に丈夫。サンヨーソーイングは「100年コート」という名前でコートを売っているくらいなので、耐久性には自信があるはず。

このシングルラグラン2、今や20万を超える。さすがにイタリア系の紡毛のコート(carusoの20-30万とか)やCOHERENCEよりは安い。でもマッキントッシュのBELFORDとかDUNKELDとかは15万で済むはず。CONCETTOも20万はしない。国産品なのになぜ、という声をたまに聞くことはある。ていうかyoasaのコートはオーダーなのに同じような素材で20万しないぞ。つまり、それだけパターンが良くできているという事なのだろう。人気だし。

このコートを買ってから、たまにコートの上からマフラーを巻くスタイルに挑戦してみているが、さっぱり良さがわからない
3回目の”まあリバーシブルだから仕方ないか…”。襟を立てると別地が見える

コートは「生地の落ち方」のほか、「襟の立ち方」が重要と思う。袖や身頃のボリュームがこのコートの特徴であるが、その頂点に座る襟がピシっと仕上げられていると、各所の緩急に統一感が与えられ、一枚の服として完成度が高い(ように私が思えるだけ)。

緩急の緩の部分も快適な服には大事で、一枚袖は二枚袖に比べて多くの肩幅に対応し、リラックスした雰囲気になると言われている。正直、個人的によくわからないが。1枚とか2枚とか気にしたことがない。2枚でどうだって曲が聴こえてくる。

一枚袖の傾斜

気にくわない細部はたっぷりあるのだが、とにかくこのコートの顔、つまりシルエットが好きだ。ただ、細部が苦手だからってそこを改造することはしないし、オーダーに走る事もない。ただ、嫌いな仕様と向き合う事で、それのいなし方を学んだり、コーディネートにうまく取り込むスキルが身に付いたと思う。時には何かを愛するには、その他が嫌いであることも必要なのかもしれない。