その昔、シャツはそのディティールで語られることは多くなかった。
95年頃のクラシコイタリアブーム以降、徐々に浸透していったのだろう。
その10年後にはファッションに傾倒している人々の間では(少なくとも私には)常識となっていた。
最近では09年にHITOYOSHIが台頭し、袖振りやハンドメイドに光をあて売り始めた。
今や百貨店の顔にすらなっている。
それらがロープライスにまで攻め込んできたのが2010年春夏。
スーツカンパニーのアントニオラベルダであった。
今もまだ、「○箇所ハンド仕上げです」とかいう文言を見かける。
最近、イタリアシャツのモンテサーロという所が気になるが、そちらもそんな販促である。
たまに、「本当に、ハンドメイド仕上げとか袖の前振りって必要なのか」と考える。
前振りの仕方とか、袖ぐりとか、それらは度合がどれくらいで、その度合が個人に合っているかが重要なのであって、
その人が着なければわからない。
ただ、度合いというのは売る側が言語化しづらいのもわかる。
結局は「美しいシェイプ」とか「絶妙なステッチ」のような言葉でごまかされる。
私自身、そうやって説明することもあった。
酒を飲んで「うまいです」と言ったって、厳密に考えればただの独り言である。
独り言を好む人もいるにはいるが。
今の主流は、たぶんストーリー販売とか物語販売とか呼ばれる。
HITOYOSHIも立ち上げ初期から「日本の職人」「破産からの再生」などのイメージが根強かった覚えがある。
ストーリーなど、光をあてようと思えばいくらでも作れる気はするのだが。
「これ職人が世界中を飛び回って探して300の生地見本の中から選んだ一つなんです」とか言われた方が
響く人にはたぶん響く。
のかな。
新しいブランドはいろんな角度から光を当てないと売れない時代だし、
インターネットでなんでもわかる時代を逆手に、光をあてない販促方法だって出てきたくらいだ。
観方一つで物はどうとでもなる。
「だいたい俺は今3歳なんだけど2歳のときにはもう分かってたねそれは単純だけど少しの目の位置で何にでも見えるってことを」
と歌われるくらいだ、常識なんだろう。
陰翳礼讃派からすれば、光も影も両方知って、
トレードオフの部分までを含めて理解してこそ、ようやく味わえるものもあると感じる。
が、大概の人は影に興味がないらしい。
立体には明暗が必要だと思うのに。
そんなリアリティは邪魔なんだろうか。
bengal
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はじめまして。
私は素人ですので本職の方とお話しできると、もう非常に光栄です。
シャツ好きの間では有名ですよ、コルt・・・いえなんでもございません。
> 初めまして、いつも楽しく読ませて頂いています。かなりの手練でいらっしゃる。
> さて、袖の後付けですが、色々試してみましたが、実施して効果のある型紙(アームホールの形状)と効果のない型紙が有る事に気付きました。後者の型紙には既に、前振り的な要素が含まれていて、見た目だけ前振りにするのは意味が有りませんでした。釦の付け方もそうですが,釦付けが鳥足とか言っても根巻きしていなければただの機械付けと同じです。スタイルだけ踏襲していても、実が無いんですね。
そうなんですよね。ハンドメイドや前振りなどのひとつひとつの要素は、単体では意味が無いんです。
ボレッリの着心地の良さを解体しようと考えた時に、襟付手縫いだとか、手縫袖付だとかも含め、このアームのパターンで・この生地で・このディティールで、優れた着心地になるのだ、としか言えないんです。
ただ、複因論はともすると思考停止にもなりうるので、どの技巧とどの技巧のレイヤーがどのような着心地につながるか検証する必要があるのですが、未だにそんな資料が無いので悩んでいます。
大手工場のパタンナーさんにも伺ったのですがナポリに行け、で終わりました。悲しいです。
bengal
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こんにちは。いつもありがとうございます。
> 物にもよるのでしょうが、3万円のインポートシャツと、国産の1万円のシャツで着心地に差をあまり感じないときも多々あります。
>
> 見た目の色気とか、些細なところの差(実はこの差が大きいのかもしれませんが)には違いがあるのでしょうが・・・
>
> 結局、服好きの男たちは細かいディティールにこだわりますが、肝心な女子はあまりその違いに気づいてくれないようです(笑)
往々にして最もわかりやすいのは生地の違いとかだったりしますからね。
生地が違うだけなのに「おっ、さすが作りが柔らかいだけある!」とかいうレビューも見受けられますし。
なお、女子を肝心のものとした場合、もはやこの違いにまなざしを向けないことが肝心かと思われます。笑
U40 448
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初めまして、いつも楽しく読ませて頂いています。かなりの手練でいらっしゃる。
私、長野県松本市にあります、オーダーシャツ専門工場に勤めるものです。社内のモノや関連会社のシャツは検品していますが、インポート物はあまり触れる機会が無いので、このページがアップされるのをいつも楽しみにしています。さて、袖の後付けですが、色々試してみましたが、実施して効果のある型紙(アームホールの形状)と効果のない型紙が有る事に気付きました。後者の型紙には既に、前振り的な要素が含まれていて、見た目だけ前振りにするのは意味が有りませんでした。釦の付け方もそうですが,釦付けが鳥足とか言っても根巻きしていなければただの機械付けと同じです。スタイルだけ踏襲していても、実が無いんですね。そういうのは、口当たりが良いし、多分売りやすいんですね。
これからも楽しみにしています。では、また。
bro
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いつも楽しく拝見させて頂いております。
>本当に、ハンドメイド仕上げとか袖の前振りって必要なのか
実は私も常々考えておりました。
物にもよるのでしょうが、3万円のインポートシャツと、国産の1万円のシャツで着心地に差をあまり感じないときも多々あります。
見た目の色気とか、些細なところの差(実はこの差が大きいのかもしれませんが)には違いがあるのでしょうが・・・
結局、服好きの男たちは細かいディティールにこだわりますが、肝心な女子はあまりその違いに気づいてくれないようです(笑)