見えない均衡

「問題はバランスだ。やり過ぎたら、バランスがこわれる」 ――”悪は存在しない”

濱口竜介氏の『悪は存在しない』を観た。映画だ。と久しぶりに思う。音楽も稀にみる出来。良かった。『ハッピーアワー』も別の意味で大変だったが、観終わった後に我に返るのに時間を要した。さいきんよく観ているセルゲイ・パラジャーノフ氏やテオ・アンゲロプロス氏みたいな系統の映画と違い、日本語であることも手伝ってフィジカルな近さがあり、感覚に馴染むものがあった。映画の季節が冬という事で、深すぎない山の冬が持つ美しさも親近感を感じる。

7ボタンだがポケットはつけるし丈も短め

映画では様々な所で二項の対立と調和が描かれていた。というわけで、カジュアルとドレスの調和に無理やり話をこじつけようと思う。そうでもしないと映画の話をしてしまう。最近はカジュアル化の波もあって、ドレスとカジュアルの境界線付近で衝突を回収し成立させようとしている服が増えている気がしている。

襟芯は接着でなくフラシで、同生地を入れてカジュアルに寄せる
襟端3cmステッチが気に入ってる

ドレスシャツによくあるセミワイドカラーを、少し角度を開いてよりドレスにする。その一方で、襟ぐりは普段のドレスシャツのサイズから6サイズもアップさせる。カフ周りはドレスシャツ同様とし袖丈はやや長い設計にしつつも、着丈は短めにしておく。

袖付けは細幅で、縫いは端、あくまでもドレス

生地はCOLOMBOのコットンウール。薄いようで厚く、うっすら毛羽だっている。そういったものは色合いを濃いめに持っていき引き締めたいが、肌色みたいなどっちつかずのクリームカラーにしてアウトラインを曖昧にする。さらにはそれを洗いざらしで着る。

白蝶のドレス用。ボタンはドレス寄りにする影響度合いが強い

カジュアルなのかドレスなのか曖昧。特に襟芯と洗いざらしと襟ぐりの効用なのだろうが、ビジネスで着ると抜栓してしばらく経った酒のようなこなれた柔らかさが出る。生地に艶があるので、崩れすぎずジャケットにも合う。不思議とあやしさはなく、バランスが保てている。もちろんデニムやカーゴに合わせても成立するし、品はあるが緊張感がない感じで留まる。

肩幅も落ち気味だけど落ちないようにしている

特にビスポークだとバランスをとることは難しいのだが、今回はうまくいった。ビスポークは好き勝手オーダーできるから成功しないはずがない、と思っている人がいるが、大半は手痛い失敗をする。何を言っているのかわからないかもしれないが、一回やればすぐわかると思う。うまくバランスが取れる今回のようなことは中々ないので、気軽にこの世界に手を出さない方がいい、とはお伝えしておきたい。

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2件のコメント

  1. 無理いってやってもらった気がするので、ナイショです。

  2. リーバ

    素晴らしいシャツですね。どちらで作られましたでしょうか?

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