服が好きなこじらせの映画5選.
洋服が好きなやつは大抵映画とかも好きだったりするし、
「映画のあの格好がしたい」とか「あの雰囲気をやりたい」という人も多いよね。
Radioheadの名曲と原題の「Open your eyes」の囁きではじまる「バニラスカイ」。
トムクルーズのこの最初のルックがすごい好きで、未だにこういうコートを探していたりする。
さて今回はややこじらせた服好きが愛する、「洋服といえば」な映画を5つあげていこう。
注意点①
あくまでもこじらせ視点。
ファッション業界の目線じゃないから、各種デザイナー映画とか、ズーランダーとかプラダを着た悪魔はデフォだと思っているので言及しません。
シングルマンも一応監督がデザイナーだしあげない。
注意点②
シャツをテーマにするとほぼすべて小津界隈になるのでそれはまた別のお話。
1、市川準「トニー滝谷」
実は市川準を語りたかったから、この記事書いてる。
もうご逝去なさった監督なんだけど、BGMの使い方とか、カメラ割の中に
「静けさ」を良いタイミングで入れてくる人で、昔の「つぐみ」「東京兄妹」とかより2000年代以降の方が個人的には好き。
で、この「トニー滝谷」は、村上春樹原作のもの。
今まで原作以上に仕上げてきた映画は、これと「楢山節考」以外には出会ったことがない。
洋服を買うのをやめられない女に対し、主人公が惚れるわけなんだけど、
原文は、
「――これ見よがしに着飾っている女はそれ以上にたくさんいた。でも彼女はそんな女たちとはぜんぜん違っていた。彼女はまるで遠い世界へ飛び立つ鳥が特別な風を身にまとうように、とても自然にとても優美に服をまとっていた。」
これを一体どう映像で表すのかと思ったのだが、多くの美しい洋服と、宮沢りえとこの独特なカットによりこれ以上に実現されていた。
さらに、独特のピーピング、というか静まり返った家具の視点のような独特の距離感のカメラワークでひたすらに映す。
で、それを渋い西島秀俊のナレーションで淡々と語る。
音楽も個人的にはドンズバで坂本龍一。
美しい服に顔を埋め涙する、ギャツビーへのオマージュともとれるシーンが未だに瞼の裏に焼きついている。
いやほんとに、名作。
市川準作品でもっとも傑作。
みんな観るべきだし、世田谷区に住んでる人は必修科目にすべき。
ちなみに市川準は、西島秀俊主演の「春、バーニーズで」も秀作。
吉田修一原作。
西島秀俊のゆれる心と表情が味ありすぎる。
これを観て即、ロケ地(金谷ホテル)へ行ったし、なんなら時計が埋まってた場所まで見つけてきた。
当然一人で行ったんだけど、なにやってんだろう俺とか思ってステーキ食ってきた。
バーニーズで買ったコートを着てた。
市川準は服が好きなんだろうなあと思うんだけど、本当にセンス良いなと思うし、
この時代に先を行っていたこのテーマ曲を選ぶセンス、最高。
2、ジム・ジャームッシュ「ストレンジャー・ザン・パラダイス」
スタイリストの本庄克行が、「実現したい世界観はストレンジャー・ザン・パラダイス」って言っていた。
これは出てくる人全員のファッションセンスがいい、というか、シーンにかっちりとはまった服装が選ばれている。
服を選ぶとき、当然誰と会うかとかを考えるけども、その人がどういう服装であるとか、
その場がどのような場なのか、シーンに溶け込めるのか、
そういった事まで考え服を選ぶことで「状況にしっくりはまって気持ちがいい」と思うようになったのはこの映画を観てからである。
エスター・バリントの東欧っぽいコートの感じも良いし、男性人の鄙びた格好もよろしい。
シーンにマッチした服装しか出てこない。
(モノクロだからゴマかしが効いているというのもあるにはあるが・・・)
トムウェイツはラジカセで聴くのが正しいが、それが出来るのはこの映画の中だけである。
3、ウディ・アレン「ブルージャスミン」
「いやいや、ウディアレンならアニーホールでしょ!?」と聞こえてきそうだけど、違うよ。
内容はぜんぜん面白くないんだけどそういうことじゃねえ。
シーンごとのケイト・ブランシェットの服・小物を見て、ブランドを当てるクイズ映画。
そして「そういうキラキラ女子は地に落ちるんや」とルサンチマンを満たしている人たちすらも込みで見る、
なんだかウディアレンらしい映画。
4、アブデラティフ・ケシシュ「アデル、ブルーは熱い色」
いい映画だよね、けど結構個人的なセレクト。
「フランス」「青」「同性愛」ってなると、
デレクジャーマンへのオマージュか、という印象が浮かんじゃって映画好きはその時点でもってかれる。
青い服とか小物とか、場面ごとに象徴的に使われている。
この映画で確認できたのは自分が青い服に弱いこと。
トニー・レオンが「ラスト、コーション」の中で、ワン・チアチーが試着室でドレスを着て出てきて、
いい服だなこれにしよう、ってなって着替えようとするんだけど、トニーが「待て、もうちょっとそのまま」って止めるんだよね。
すごく良くわかる。
青いドレスとかワンピースとか、美人が着てたらハッとする。
うーん、トマスアクィナスと「ラスト、コーション」の長話になりそうなのでこの辺でやめておこう。
5、クエンティン・タランティーノ「レザボア・ドッグス」
男の子なので一度はこれやりたい。
偉大な傑作ハイスト映画。
オーシャンズ11じゃないんだよ、レザボアドッグスなんだよ。
ブラックスーツにナロータイでビシーっとキメて、カフェでクソみたいな下ネタで談笑したあとに、
「あーかったりーなー」っていう感じで外に繰り出し、バーボンをスキットルで飲んでヤマにとりかかりたい。
学生時代にも何度か提案したけれど、誰もしゃんとしたブラックスーツ着て来てくれなかった。
ブラックスーツを着て集まって、それをクソみたいなノリで汚してしまうとか、ガテンな仕事でくたびれさせてしまうっていうのに憧れる。
そんで「うわーやりやがったー!この××野郎が!」みたいに言い合って、
それをものともせず仲間同士でガハハハって笑い笑われながら仕事に取り掛かりたい。
以上。
本当は西川美和の「蛇イチゴ」も入れたかったんだけど、以前書いてるしいいか。
こじらせ感が容赦なく伝わっていることを祈り、これにて終了させていただきます。
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