1969年、マイルス・デイヴィスは”In A Silent Way”というアルバムをリリースした。マイルスがエレクトリックに傾倒した初期の作品で、無拍子・ドローン的な通奏のベースの上、ギターやキーボード、トランペットが浮遊する心地よい音楽。しかもその合間に禁欲的な”It’s About That Time”を挟む。前衛的なアプローチのこのアルバムはBrian EnoやMark Hollisをはじめ、いわゆるアンビエント的なアプローチを様々な分野に持ち込んだ者たちに影響を与えたのだろう。Brian Enoのエレクトロニカへの影響は絶大であることは言うまでも無いし、Talk TalkのLaughing StockはTom Yorkeをはじめロックへの影響が未だに根強い。そういうわけでこの”In A Silent Way”はまったく静かではない方法で地殻変動を生み出していった。
さて、トレンドの”Quiet Luxury”はそのまま控えめなラグジュアリーらしい。ノームコアが年取っただけじゃないの、あるいはイタリア系のコンサバなブランド好きがSDGsの関係でStealth Wealthとかドヤってるのでは、程度の理解しかない。それよりも、Silent、ではないんだなと思った。まあそりゃあそうか、だって”Silent Luxuary”なら服が高いと違和感がある。全身ユニクロで東京の都心の不動産を100エーカーくらい持ってる、っていうのが”Silent Luxuary”ではなかろうか。わからん。
と、思ってた時にバーワンからもらったやつ。cottleと一緒にもらった。お高めのシンプルなドメスティックブランドを複数クローゼットから排出しておSharonでスンとした服を買うあたり、Quiet Luxuaryの波に「ふ~ん」とか言って即乗っていく凍狂オシャレ強者である。
オーベット。オーベット、というタグを見るたびに「お杉」という名が頭に浮かぶのだけれどその捉え方は間違ってるんだよな。コンセプトがsmoothdayと全然違うし、仕事ぶりを知ってるのはもう大分前だし、そもそも今(2023年)やもういないし。ここでパーソナルな事に触れてもしょうがないので服の話だけにしよう。
シンプルなつくりである。比翼、小さめのカフ、剣ボロも細い。襟ステッチもない。”Quiet”を通り越して”Silent”であるように思える。いや普通にミニマルって言えばいいんだろうか。これを着てジルサンダーに行った時、いいシャツですねって言われたので多分ジルサンダーの良しとする価値観と近いのだろう。
いわゆるビッグシャツなので、着ると「被り物」のような、ふわりと肩に乗る感じになる。アームホールが大きいのも相まって、なにやら白い物体となる雰囲気が出るかわいいアイテムだ。私はかわいい方ではないので、ロールキャベツ男子とかツルっとした顔のモダンなシティーボーイに似合うのだと思う。というかこのブログで何度も触れている通り、そもそもこの比翼の仕様にアレルギーを持っているのであまり着ていない。比翼のつらい所については細かくは触れない。これは個人的な問題であり、皆さんに呪いをかけたいわけではない。
静かな音と無音は違う、という事がよくわかる。比翼やステッチを抜く事で、これは無音に近くしている。南シャツのvol.4でやったような職人技による無音とはまた違うが、無音を目指す行為そのものに意志が見える点については同じだ。
1969年、マイルス・デイヴィスは”In A Silent Way”というアルバムをリリースした。マイルスがエレクトリックに傾倒した初期の作品で、無拍子・ドローン的な通奏のベースの上、ギターやキーボード、トランペットが浮遊する心地よい音楽。無音を目指した数々の服は、まったく静かではない方法で地殻変動を生み出していっているのかもしれない。また冒頭と同じような話をしているって?”In A Silent Way”みたいですね。
Baggio
ご返信ありがとうございます!
bengal
Baggioさま
定番で出しているものっぽいと思ってます。
https://shop.pheb.jp/smartphone/detail.html?id=000000007473
今はデザイナーも居ないと思うのであるかどうかわかりませんが…
Baggio
このシャツ気になるんですけど、品番とか教えて欲しいです。
ブランドのHPとか見たんですけど、今シーズンのものじゃなさそうだったので…