エリオット・スミスは悪魔からクロウタドリの心臓を飲まされていたらしい。

フロント8釦。

大宮に東京から多くの服好きが集まる店がある。

関東圏には「氷川神社」と称する神社が複数、点在する。その総本社が埼玉県の大宮駅にある「大宮氷川神社」である。もちろん、大宮という名もこの神社から来ている。神社周囲の森を整備した大宮公園、その神社参道の並木通り沿いの公園の古びたビルの地下。ひっそりとコンクリートを敷き詰められた空間。

店の名をWHITE ALBUM、という。してこの店のプライベートブランドはBLACKBIRD。音楽が好きなら由来はご承知の通り、ビートルズの白盤(通称ホワイトアルバム)に収録されたBlackbirdという、黒人公民権運動に捧げた曲だ。

ここまで言っておいてなんだが、ビートルズは詳しくない。音楽が好き、とかバンドやってた、と言うと私も音楽やってましたという人に遭遇する。実感で2割の人は「ビートルズが好き」と言うが、私は娯楽で聴いた事がほとんどない。サンプリングのネタとして使えるか、で聴いた事の方が多いと思う。(ニッチな話で誰もわからんと思うが発想としてはエッケハルト・イーラーのアンビエントドローンの名曲、プレイズ・ジョン・カサヴェテス2に近い所まで行ったがまさかあんな美しいループが描けるとか思えず、初めて聴いた時は仰天した)

これは素材を変えてたびたびリリースされる定番品、Hooded slant shirt。フードシャツというと個人的にはYAECAのロクヨンクロスじゃん、と思うが過去のBLACKBIRDのアイテムを見ると、イメージソースはHOBOとかアメリカンノマド的な着こなしにありそう。

BLACKBIRDはマオリシャツなど特徴的なアイテムが多く、表現の幅がとても広い上にこだわりが異常なほど詰まっている服が多いので、個人的にモノとして好感を持っている。服好きが服好きのためにやっている服。

大手メゾン使用のナイロンとの事だが
カフ先は三角で剣ボロ、ミリタリーを想起した

これはワッシャー加工ナイロン100%。紫とも青とも取れる説明しづらい色合い。強い発色だけれども、表現できる言葉が見当たらない。アウトドアブランドだともっと覚めるようなブルーとか、赤味が強く明度が低い紫はあるけれど、この色はどちらでもない。

釦は2穴。素材はホーンだろうか。釦付け糸は個別に色が違うのだが、2穴だからか気にならない。これは2穴嫌いにとって幸いだった。個別に釦付け糸の色を変える事による悪目立ちを、2穴釦の採用によって解消するというアクロバット。

フロントに一つだけあるパッチポケット、妙な気分

その名の通り、前立てはスラントして首元に到達する。クレッタルムーセンでは顎下に金属ジップがあたらないようにというコンセプトがあったが、これはボタンだし、単なるデザインだろうか。パッチポケットが片方だけというのは2パッチを愛用する自分からすると少し落ち着かないが、子育てに置いて緊急避難的にサッと物を入れられるポケットがあるのはありがたい。松ぼっくりを渡してきて手を塞いだ瞬時、走って逃げだすというHIT&AWAYを繰り出す奴らに「サッと物を入れられるポケット」は確かな対抗武器となる。

地味にフロントにバストダーツが肩線から入っており、前肩の人間には助かる(のか?)。後ろはサイドプリーツだが、前も後ろも2本2本というのは狙ったのだろうか、と勘繰る程にはこのブランドのディティールへのこだわりようは凄まじいものがある。

他にも面白いアイテムが無数にあった。ウェスタンシャツなんかはPTAの映画に出てくるアクの濃いキャラが着てそうなイイ感じのパウダリーな色の緑で。滝藤賢一なら即買いしてたろう雰囲気。いや顧客層じゃないだろうけど。