今年もレジのおばちゃん達が一斉に14:26にフリーズする儀礼が過ぎた。

路線上のパンタグラフの電線の揺れが風を切る音、貯水槽のポンプが破裂する音、眩暈と思って路上で膝を落とした自分を思い出す。

親族の一人は地震直後に「今日から全てが変わる」と思い多種のリスクを減じる行動に移ったらしく、そんな考えを巡らすことのできる人に畏敬の念を抱くのみだった。

「3月11日以降」という概念は、個人的には南海トラフという言葉がセットになっている。いつか来る老後のようなものである。その備えを動機にして買った服が一つある。

 

クレッタルムーセンのダウンベスト。

ダウンというものはあまり着なかったのだが、ある真冬の日、知人がダウンベストにニットという出で立ちで「全然寒くないよ」と言っているのを聞いてから興味を持っていた。

曰く、体幹が温められていれば寒さは感じづらい、と。

袖までダウンがあると動きづらい上に、腕のシルエットに納得できるダウンジャケットが個人的になかったので、ダウンベストという選択肢が自分に向いているのだなと考えた。

 

このタグ、千切りたいと思っているが便利なので迷っている。

当然だがダウンベスト、軽くて動きやすく温かい。

前々から「冬の夜に被災し家を出なければならない時に持っていく1着だけの最強のコート」を探していた自分にとって、リアルにその状況下の被災をイメージしたらどう考えてもダウン必要だろ、としか思えなかった。

しかし良いコートはどうしても欲しい、うむ、そもそもここで言うコートは精神的な相棒みたいなものだろう、ならば携帯性が高く枕にもなるダウンなら…?しかも動きやすくコートの下にも着れればなお良いのでは…?という事で色々探し回った結果がクレッタルムーセンのベスト。エイナリーダはもう持ってるのでなんだまたお前か、と。

 

手洗いで洗え、内ポケットを含めポケットがついており、その内ポケットにまとめることが出来るというパッカブル仕様で、首元までジップを挙げられ且つそのジップは顎に接触せず、首元裏地はフリースで心地よく、袖などの防風性がきちんとして、柔らかく、なにより軽い。

十二分に機能的過ぎた。

ただ、何も考えず買ったので黒。重たい印象なので軽い色にすれば良かったなとも思う。

 

 

と思ったら、そもそも色があまりない上に、もう生産されていないのか日本に入ってないのか、Boreは普通のダウンジャケットになっていた。

というわけでこの前見たpatagoniaのダウンセーターをおススメしておく。多分これもパッカブル。

 

 

水と食料、エマージェンシーブランケットにメディカルバッグ。毎年3月にはそういうものが売れるはず。

家族が増えたら毎年3.11にTEN-Cを家族分追加していったりそういう人になったりするんだろうか私は。

そういうわけで皆さん。

被災して家が壊れても、家に捨て置けないお気に入りの一張羅を着て会いましょう。