すこし厚ぼったい生地で、幽玄な雰囲気がある。
文化服装学院を出て、フランスのサンディカに留学し、KENZOで修行した沖縄出身の43歳、前濱進作がデザイナーを務めるのがgolem。蚤の市などで古い素材を集めて服にする、という特徴的なブランド。
 
一方でアンティークレースを使ったウェディングドレス、emethというブランドも運営している。しかも最近は料理に凝っているようで、本格的なフレンチを作ったり出身の沖縄料理を現代風に解釈して作ったりされているご様子。
 
ポエルもそうだったが第二釦の位置が高い。
生地はコットンリネン。シャツにどうしてこの生地を使ったのだろうか?普通、シャツと聞いて思い浮かべるのは薄い生地だが、これは違う。ざらりとしたリネンの風合とネルシャツの合間。黒いシャツは着るタイミングを選ぶが、リネンや起毛した生地であれば緊張感が弱まり着やすくなる。
 
素材が先にありきだったのか、それともイメージが先にあったのか。シャツジャケットと言うには生地が柔らかいし、シャツと言うには厚ぼったい。よく使い込まれたカーディガンみたいな印象。
背中のタックにハンドステッチが入っている。
最初は二枚剥ぎなのかと思った。
古い素材というのは、ある程度安定している。新品から劣化するスピードというのは使い始めが最も早い。特にヨーロッパは染色堅牢度など規格がゆるいのでなおさらその傾向は強いはずだ。古い素材は、ある程度の回数の着用・洗濯に耐えてきたから今も残っているのであって、それは劣化のカーブが踊り場の位置に近いはずである。さらに劣化した状態でよく見えているということは、そこから多少劣化が進んでももともとのアジに数えられやすい。
 
 
ボタンはエルメスの黒蝶貝釦を裏返して使用している。エスプリってやつか。
人間もそうだ。年老いた人間は変化に追随できない。タンパク質合成速度の低下。動的平衡を保つ新体細胞代謝サイクルが、映写機のごとくに・・・

危ない。突然したり顔で老いについて語り始める所だった。これだから色々と物語性を溜め込んだパリの服は危険だ。蚤の市では浪漫が多種多様に売られているが、本当に買うべきものは地下鉄のザジが言う通り、アメリカ軍の払い下げのジーパンのみだ。
カフではなくスリーブの先に釦が付いている。やや使いにくいが、カフ周りの窮屈感が少ない。

golemをオーダーする人間に出会う事は珍しいが、それを繊細な生地で2着もオーダーした狂った人間が身近にいる。そいつは池袋を全裸+ファリエロサルティのストール4枚を巻いて歩いていた。狂人は狂人に服作りを依頼する。