「地下鉄は見たの?」

「うぅうん」

「じゃ、何をしたの?」

「年を取ったわ」

レイモン・クノー “地下鉄のザジ”

美術を学んだシューズデザイナー、ミッシェルペリーは2001年から15年以上にわたり、JMウエストンのデザインを担当した。2015年、彼は180をベースに、もっと履きやすく、走りやすく、気軽にしたマッケイ製法のローファー、Le mocを生み出した。

表現として適切か微妙だが、180よりも靴っぽい
裸足で履く事も想定されているライニングのつくり
ソールからモカ縫いの所までの線の描き方が個人的に苦手

ラストがそもそも180と異なる281であり、細め長めに仕上がっている。その上マッケイ(ブレイク)製法だったり、ラバーを埋め込んで屈曲性を高めたソールにしたり、コバの張り出しが抑えられていたりと、180をカジュアルに開放した、との触れ込み通り細部も含め雰囲気が砕けている。

とにかくバリエーションが豊富。アウトレットでも目が覚めるようなサフランイエロースエードの個体、キッチュなムードのミントグリーンのカーフの個体、イブクラインのキャンペーン限定クラインブルーの個体など、様々なパターンで展開される。

サドルのwのステッチ、いらないよね
このソールもそれほど好きでない
履き口は補強されている

革は柔らかいし、確かにかなり履き易い。履いてみるとよくわかるが、靴底下の凹凸の感じ方が180と全く違う。ウエストンの靴は180のほか今まで300705641、そのほかセミブローグとシングルモンクを履いてきたが、砂利や石畳は元より、地面の凹凸を感じた事はなかった。底が薄いのは確かに柔らかさ・軽快さを感じる面では良いが、体力は奪われる。長い間歩くと(3万歩程度)カンフーシューズ同様、足裏が痛くなるケースもあった。まあそもそも加齢ゆえのものかもしれないので、何とも言えない。

サドルの抜型が180より細い。アーニャ、余裕の笑み
もう少し小ぶりな方が好みだが、踵が小さいのは日本人くらいでしょうしね

踵は大分違う。マッケイや薄い底に由来する返りの良さもあるものの、そもそもトップラインが高く補強されており、ホールド感があるため踵が抜ける事がない。購入の決め手は踵のホールド感、および柔らかさであった。さいきん、感動パンツも買ったし、ポリ混のパンツも履き始めている。もう加齢に逆らえないのである。

2017年の時は春夏限定だった気がするが今はどうなのだろう。値段も8万だった気がするのだが、今は10万を超えており、個人的には高すぎると思う。これもアウトレットで散々悩んだ末に購入している。そのくせ、180をウエストンに頼んでスポンジソールに換装してもらった(高かった)ものの方がよく履いている。4万余分にかかるけど、定価でルモック買うならこっちの方がオススメとすら言える。しかし金ばかりかけて、何も得ず、皺だけが深くなったな。

しかし文句ばっかり垂れているな。文句言いながらしぶしぶ過ごす様はまさに中年。年寄りは他人に語る人生のスラップスティックのストックがあるが、それを他人に語る体力も無くなってくる。老兵は去るのみ。