お金があれば、もっと良い調味料を揃えたいな、とキッチンの調味料を見ながら思う。例えばフルール・ド・セルだ。ゲランドの塩が今までの生活の基本的な塩だった。ただ、カマルグのフルール・ド・セルを買っては使い切るまでの間、幾たびも快楽を感じられた。コルクのフタに手をかけた瞬間に既に美味しい。でも高い。100グラム千円以上するのは高い。また、パッケージが好きではない。イビザのフルール・ド・セルも同じ。あのティファニーカラーの塩を普段使いしている人間はペリエを冷蔵庫にチラつかせる業界人と同じ、別の国の住人だと考えている。

我が家のキッチンには、今はマルドンの塩が眠っている。いい肉にクリスプな感じを添えるために出番を待っている。どこかの王室御用達をちょっとずつ使うのが精一杯。でも、普段使っているゲランドの塩だって十分に美味しい。フランスのどこかの塩畑で天日干しされる粗塩。不純物をありがたがる性格ではないが、そのおかげか塩の味が丸い。気がする。塩はゲランドで十分、良い生活を楽しめる。

カジュアルブロード白シャツは無印良品で十分。そう多くのファッション関係者が言う。2990円という価格で白ブロードのカジュアルシャツを選べ、としたら8割以上の人間が選ぶのでは、と思うくらいよくできている。それが無印良品の洗い晒しブロードシャツだ。前に「新疆綿」って名前ついてたけどまあこの時代なので流石に名前変わってるね。

で、これ、見た目は凄く普通とか、究極の普通とか、みんな割とそういう事言うんだけど、違うよね、と言いたい。普通の白いブロードシャツとはちょっと、いや割と違う。マジ。何回でも言うけどね、シャツたくさん買ってるけどトーシロよ私。業界知らんし。素材疎いし。ファッションもわかんない。それでもわかる違い。だれでもわかる違い。

洗い晒しで一晩を共にしたのを引っ掛けて撮った。

まず見た目でわかるのは着丈。これは指摘されてる事も多いけど、とにかく短い。この短さが「カジュアルシャツはパンツのフロント部分の半分に来る位がスマート」みたいな基準にマッチするんだろうね。これなんだっけ、MB理論?知らんけどこの理論には別の道(ダークファッション道)から同意するに至ってるし何も言わない。

ちなみに背中はボックスセンタープリーツではなく、肩甲骨に寄せたツープリーツだった。

アメカジでよくある内側の三角布仕様。

続いて素材。

生地は非常に特殊。「さすが超長綿、なめらかだ~」「オーガニックコットンは柔らかいね~」じゃないよ。違う。このハゲ、ちーがーうーだーろー! なんで誰も突っ込んでないんだよ。微起毛加工。微起毛加工だろ。これブロードシャツなのに微起毛加工してるだろ。ハゲどころじゃなくフッサフサのアデランス。触って一瞬で「えッ キモッ」ってなったよ。でも「キモッ」っていうのは悪い意味じゃなくて、牛乳パックを開けて即飲んだら中身がコカ・コーラだった、っていう違和感。「ブロードシャツ」が起毛加工してあるとは思わないじゃん。クオリアに触れたアハ体験。スキンヘッドに柔毛生えてたの。

左が裏面、右が表面。生地目が見える裏に対し、表がふわっとしているのがわかるだろうか。

しかもこの加工、表面にしてあって裏面にしてない。着用者の着心地のためではないのだろうか。もふもふニットを着て戦略モテのおさわり女子さながら、やわ肌シャツを着てソフトタッチな草食男子を演出?数日間裏表を逆にして拝み留めで着てみたりしたが、やはり生地感が気持ち悪かった。

この微起毛加工のおかげなのか、やや透けにくいという付加機能があり、これも計算の上での加工なんだろうか。

いかにもプラスチックな光沢。
滑り止めの溝。

釦。

見た目はユニクロと大して変わらず、使い続けるなら私は変えてしまうだろうと思う見目形。

裏側に溝が彫ってあり、ここは確かに滑りづらい加工として有効と感じた。他では見たことが無いのだけど、この価格帯だとプラボタンだから普通に出来るものなのだろうか。高級シャツだと貝だから掘るのが難しいとか。

小襟ではなく、往年のレギュラーカラーってほど下を向いてもいない。
洗い立て直後。

芯。

レディースの着こなしによくあるけど、カジュアルシャツの襟を立てた状態で全体をくしゅっと握って、適度にこなれさせてから前方襟羽根部分だけ下ろす、みたいなスタイリングがあるじゃん。Frank&Eileenとかで流行った奴。あれは芯が硬すぎず、後ろ台襟で立ち上げたらある程度維持できるようなしなやかさが必要なんだけど、この芯はそんな感じ。カジュアルシャツだとスカスカな芯とか芯無しであることが多いけど、形を維持できるようにという意図でこの硬さなんだろう。

無印の縫製に期待はしていない。ファストの価格帯でユニクロに勝てる物は無いと思っている。

縫製とか細部の作りは調べればいくらでも出てくるけど、個人的にはファストファッションでこの辺をどうこう言うつもりはない。ユニクロはオーバースペックだし無印良品も十分高いと思う。2万とか、下手したら5万とかのシャツなのにユニクロと同等の縫製品質のシャツもあるので、もう充分でしょう。

色バリ増やしてもいいと思うんだけど、無印良品の主義で出さないのかな。

昔、あるツテがあり、GOYAのオリーブオイルが年に一回安くなる機会があったので定期的に買い、コンフィなどで使い切っては安くなる機会をまた待っていた。

このシャツも定期的に1990円になる事がある。1990円の時にストックで買いためる人もいるらしく、つまり白いカジュアルシャツって元来、汚れたらティッシュのように捨てるもののようだ。それは確かに清潔(感)という意味では正しい。

でも一方で垂水ゲンさんのカルロリーバみたいなものもあるじゃん。個人的にはそういう、自分が着てはじめて完成するような、自分が署名して形を保つような、そんなものが好きなんだけど、これは少数派なんだろう。