ETROとDRIES VAN NOTTENとKENZO。
その昔、上の3つのブランドを歳を重ねた人が着ていた。
そういった人には無条件に「お洒落ですね」と言うクセがあった。
中でもケンゾーだけは飛び抜けて大げさにリアクションをとった。
上にあげたブランドはいずれもフォークロアやエスニックのベースがあると考えており、その色使いを敢えて採用する人々は「ファッション感度が高い」と思っていたからだ。
特にエトロとケンゾーのアイテムでは当時、ミクロに見ると雑多なパターンなのにマクロでみると完成された色になっているなと思わされた事が多かった。
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印象的な話だが、ケンゾーは中でもコラージュや色彩のレベルが「手に負えない」イメージで、それを飼い慣らす人々には畏敬の念を覚えていた。
今やスウェットの胸で虎を飼いならしていれば「はいはいケンゾーケンゾー」だが。
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このシャツで最も気に入ったのは「モロッコ製」だったことだ。
フランス領だった歴史を持つ観光大国モロッコだが、
何か熱帯のエキゾチズムを感じさせるケンゾーのこのパターンのシャツが生産されているとなると
何かロマンティックなものを感じる。
モロッコへは行ったことが無いが、マラケシュ(だったっけ)にあるサンローランが愛した鮮烈な青の庭園などは、
異国情緒がヨーロッパの美意識とバランスしてそれはもうトリップに最適な所なんだろう。
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だから「フランスのシャツって意外にツインバレルよく見るよね」とか「モードのシャツに袖付を期待しちゃいけないよね」「モードはステッチのキワ縫いでドレッシーに見せるの好きだよね」みたいな現実的な事を言っている場合、
では、
ないのだ。
モロッコの夜に思いを馳せるのだ。
いや、チュニジアの夜か?
そりゃアートブレイキーがいい、って違う。
アメリカの夜か?
阿部和重かトリュフォーだけどああケンゾーパリだし後者に話がそれた方がいいか、って違う違う。
何を言っているんだ私は。
カサブランカで迷ったみたいだ。
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台襟だ。
台襟を見て心を落ち着けるんだ。
いいか、南の真珠など私は見た事もない。
意識だけだったらどこへだって行ける。
ここにあるのはマラケシュの空気を孕んだ糸で織られたシャツだけだ。
いいか、台襟だ。