その昔、ラフィネリアという店があった。
丸の内にあった、イタリアの服をメインとした店である。
オーダーに力を入れており、そこでスーツを仕立てた人も多かったことだろう。
運営していたのはサスティーンジャパン社。
現在のアルベスティの代表が在籍していた、輸入商社である。
サスティーンジャパンは2011年に倒産し、ラフィネリアも閉店となる。
ラフィネリアはそれこそコアなイタリアのブランドを取り扱う店であった。
以前紹介したネクタイブランド・ジャネッリや、
ビームスでおなじみとなったジャケット、ダルクオーレなんかも当時から扱っていた。
そこで、扱っていたとあるナポリシャツブランドがある。
名をエマニュエル・マフェイス、という。
ある日私はアメリカの服オタクの連中と「既製品での至高のシャツは何か?」というテーマで話をしていた。
オーダーとなると、やれシニスカルキだのペコラだの、アンナにスーパーリーバをビスポークしてもらえだの、
規格外の話が出て、ついには個人的な経験からのビーフがはじまる。
故にテーマは「既製品での至高のシャツ」となった。
大抵の服は着たなあと思う中、ラルフのパープルレーベルを愛用している奴が挙げたシャツは着たことが無かった。
それがエマニュエル・マフェイス。
エマニュエル・マフェイスのシャツについて言いたいことは二つある。
一つは「変態性」だ。
マニカカミーチャや、後ろ身頃のギャザー。
ナポリのシャツを感じさせる仕上がりである。
大したことはない。
当然手間がかかる高級シャツであるが、独特というわけではない。
勿論袖は手縫い付だし前振りだが、それらすべてが、
「高級ナポリシャツ」の説明で納得できる。
・・・?
・・・??
ガゼットのカンヌキはなぜこのテンションでこの長さ・太さ・・・?
カフのこのしつけ糸みたいなのは、なんだ?
襟にもあるのだが、これは一体・・・なんだ?
これ、まさかステッチか?
でもなぜこんな縫い方を・・・?
そもそも、なぜクレリックの癖にカフは元生地と同じなんだ・・・?
わからない。
ただ、台襟のステッチを見ても分かる通り、ジャネッリの襟羽根並に細かい。
手間がかかっていることに変わりはない。
最強の変態シャツ。
それがエマニュエル・マフェイスの立ち位置であり、このブランドのみが生きる島である。
そして言いたいことのもう一つ、それは「襟」。
うまくアイロンがかからない位立体的に仕上げているものは
全く無いというわけではないが、
それよりもエマニュエル・マフェイスの襟型は、見たことが無い。
アウトサイダー・アートのような美しさがある。
1枚目の写真でうっすらわかるかもしれないが、
襟型のそれぞれの辺が、とても微妙な曲線で構成されている。
この襟型にはめ込まれるには私の顔など醜悪に過ぎるとまで思う。
今の所、ターンブルカラーより美しいと思っている。
この絶妙な完成度を伝えられる自信がない。
それくらい独特だが、美しいシャツだと考えている。
マフェイスのシャツは、確かにシャツの一つの終点に存在している。
bengal
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> 襟のカーブラインの美しさに息をのみました。
> けれども、縫製部分によって運針幅や布際までの距離を変えている、その意図が私には解らなかったです。多分に装飾的なものでしょうか、それとも実用的な理由からでしょうか。それとも、おっしゃるように変態性からくるものでしょうか。
> 西麻布にあった頃のラフィネリアを思いだして感慨深くなりました。こじんまりとした本当に良いお店でした。ボノーラやアルティオリ、ガエターノ・アロイジオなども扱っていたように思います。
縫製部分での運針幅替えは、広くとらえればタイユアタイに卸している某シャツブランドもよく多用する手なので、
何か実用性があるのかもしれません。
アルティオリ!懐かしいですね。
つい最近使い込まれたアルティオリを見て変態性に驚きました。
ああいった仕事し過ぎたものというのは見ていて面白いと思います。
Brassai
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襟のカーブラインの美しさに息をのみました。
けれども、縫製部分によって運針幅や布際までの距離を変えている、その意図が私には解らなかったです。多分に装飾的なものでしょうか、それとも実用的な理由からでしょうか。それとも、おっしゃるように変態性からくるものでしょうか。
西麻布にあった頃のラフィネリアを思いだして感慨深くなりました。こじんまりとした本当に良いお店でした。ボノーラやアルティオリ、ガエターノ・アロイジオなども扱っていたように思います。