現在あるナポリシャツのうち、ハイエンドでコアなシャツの一つ、モンテサーロ。
 
何年か前、アヴィーノ・ラボラトリオ・ナポレターノを見かけた時。世田谷赤堤のとあるお店で究極のナポリシャツとされたそれを、ビームスハウス店頭で何回か試着しするたびに「太いな…」と逃し、ついには買わず終いとなった。その後にもう一つ、究極のナポリシャツと称されていて出会ったのがこのモンテサーロ。
正直ナポリシャツはもう良くない?という心持ちのなか、久々に高級ナポリシャツでも買えば違うのかなと買った思い出深いシャツである。
 
トータルブランド化しているということで、シャツ専業になったラボラトリオナポレターノとは逆。FBを見る限りジャケットやパンツも作っている模様。
 
 
パッと見でイングレーゼのようなムンムンな感じはなく、上品な印象。フィットは良い。
 
着ていたら指摘されたのだが、柄合わせとかちゃんとできているかを確かめたくてチェックを買ったわけではない。なんか人をケチ付けるためにシャツ買ってるミステリーショッパーみたいに言わないで欲しい。
 
台襟は3.8cm。1cmに10-11針。襟・カフともに端より5mmでステッチ。ボタンは根巻なしの鳥足。柄合わせはしっかりされている。
カジュアルよりに合わせ襟のステッチはやや間隔を空けている。
ガゼットは同生地で好印象。さらにカフは円錐カフ。
ワイドスプレッドの襟型は身頃に沿うように襟先が落ち着く。その昔、良いシャツの基準の一つに「前身頃に沿うように襟羽根が落ちていく」というものがあった。アイロンとか襟型の比率で変わる要素めっちゃあるやん…とか当時は思っていたものだが、これを見てもそうそう無いくらい美しい襟型だと思うのである程度その基準は正しいのだろう。
 
袖付けは30度反転させて手縫い、マニカカミーチャや弧を描くバックヨークのギャザーは控えめでよい。更に身頃の縫製線は3mmと細い。しかもダーツが無い。脇でウエストを解消している。バックダーツ無しで脇線と肩で何とかするのは山神さんをはじめF社やM社などナポリシャツ大御所がやっている方法。柄物のシャツでは効果的。
 
 
襟付け、ヨーク、ボタンホールなど、カフ付けとギャザーなど、手縫いのオンパレードである。
さらにタグはシルク糸で手縫いしているらしい。
 
さて、そこまでやっているので正直値段は高い。この値段ならオーダーをした方が良いのではないかと思うくらい。それでもこのシャツは売れているのだろう。
 
オーダーものより高くても売れる既製品の服は、二つの強みがある。
ブランドが強いこと。もう一つは、ある美しさを持つこと。モンテサーロは後者だろう。
 
衣服というのは様々な変数があり、一概に言えることはない。複雑な要素が絡み合ってよしとされるそれを、文字や法則に起こすことは難しい。その中で数々の試行錯誤の中から美しい組み合わせを出来る限り正確に手戻りなく選び取る力というのはセンスとしか形容できない。このセンスを以て美しい組み合わせを実現し続ける作り手は、事物に強い価値を与えることができ、それはオーダー物にはない美しい比や美学が埋め込まれており、それが故に評価されるのだろう。
 
ところでここはサイトがしっかり運営されており、英語で説明も乗っている。SNSも4つ運営、オンラインショッピングも機能している。ナポリの小さなカミチェリアにしてはずいぶんと豪華だ。む?kitonのOEM先?
ふむ。
高いものにはそういう面もあるのかもしれない。