ピアノの投稿シリーズを忘れていた。

スワヴェク・ヤスクウケと読む。ポーランドのピアニストである。

2014年のピアノソロの「Sea」は日本でもヒットしたらしく、私も昨年からずっと聴いている一枚である。海中で厳かに鳴り響いているようなピアノの音色に、繰り返しのフレーズというミニマルの要素が加わっている。
ダスティン・オハロランのピアノのようにストーリーテリングな要素は少なく、よりFurniture Music寄り。
 
 
 
一曲目からまさに海中に潜っていくような感覚を得る。フェルトノイズをピアノの響きを和らげるために取り入れる手法は今にはじまったことではないが、このピアニストの旋律では本当に柔らかいノイズが違和感なく音楽に溶け込む。
 
 
さて、そんな彼のニューアルバムが昨年末の「SENNE」。邦題は「夢の中へ」。彼の3枚目(4?)のソロアルバムで、一聴即買。
今回は4歳の娘に「寝る前に音楽を聴かせて」とせがまれて弾いた曲が元になっているらしく、A=432Hzチューニングで、森のなかで一夜のうちに録音したという物凄くバックグランド満載の一枚。
A=432Hzってスピリチュアル的な奴でしょ?と思う人は割と多いのだが、ただのチューニングの話である。悪魔がどうのはルドルフ・シュタイナーに言及されたせいである。
ギタリストがドロップDとかにしたりヘヴィメタで一音下げにするのと同じ話であり、尚且つそれらより下げ幅が僅かな8Hz。聴いてみるとわかるのだが、432Hzはくぐもった感じがし、440Hzはクリアに聴かせようとしている音楽だ、という印象を受ける。個人的には、今の人たちがA=440Hzの音楽を聴き慣れているからなんだろうと思っており、やれ自然の音が~とかアジアの瞑想的音楽が~とかいう意見は眉唾と思っている。単に大多数の音楽がA=440Hzであってそれ以外の少数派が存在する、という話。
ただ、今作はそのくぐもった印象がとても良い影響を与えている。
 
 
 
繊細なタッチで、ピアノの一音一音が眠っているかのように響くので眠くなる。これを聴きながら外を歩くのがとても気に入っている。別に私はユング派でもなんでもないが、アクティブイマジネーションのような、何かフローに入っているような感覚になる。
はじめ1曲目の冒頭を聴いた時は「sea」の方が全然良いじゃないか、と思ったのだが、途中から徐々に繰り返しの森の中に取り込まれていき、夢遊病のような状態でぼんやりしているうち、いつの間にか暗いところを抜けたように終わっていた。不思議。
 
ちなみに一枚目の「moments」は硬質な音だがこれはこれで正統派のピアノソロ。クラシカルながら今の気分を盛り込んだ感じの音で、良い。本人がyoutubeにアップしているワルシャワのライブコンサートも響きが良いので音源化しないだろうかなと思っている。
 
 
今年の秋にまた開催される例のピアノエラに来日するらしく、楽しみだ。