ストック5.土屋鞄のガジェットスタジオキャリートート

 
何度かこのブログにも登場しているので、贔屓にしているんじゃないかという土屋鞄。たぶんブレイク前から知ってるから愛着があるんだろうなと思う。

今回は土屋鞄の鞄を紹介する。

今調べたら「ガジェットスタジオキャリートート」という名前だった。今では廃盤商品となってしまったらしい。
 
 
ブルンとした厚い革に真鍮の金具を使って丈夫に作られた鞄。
鞄に対して、個人的にはこだわるディティールが多い。そのうちの一つが光る金具。マットな仕上げの金具でないとギラついて嫌になる。真鍮もあまり好きではないのだが、これは露出する面積が少なく目立たないし、グロッシーなシルバーより全然良い。
 
とにかく丈夫なので、好き放題に扱っている。引っ掻きキズなども多いはずなのだが、撫でていると見えなくなる。
 
昔、文京区でぶどうのツタで鞄を作っている職人さんに聞いたのだが、鞄を長く使う時の重要な手入れは「撫でる」ことだそうだ。職人さんがツタで作った30年前のカゴが二つあり、片方は使い込まれたもの、片方はデッドストックだった。後者は干からび細っていたが、前者は明らかに艶があり、鈍い光沢を潜めていた。曰く、人間の手には油があるので、たびたび気にかけて撫でるだけで積み重なり美しい艶となる、とのこと。人の油は必ずしも汚いわけではなく、それは鞄にとって栄養であることもある、だからあなたも手をかけてやることを惜しまないで欲しい、そうすれば鞄も応えてくれるだろう、と職人は目を合わせずに話してくれた。
 
 
内側はコットン。チノクロスだろうか。大きなジップポケットが一つ。
外側にはマグネットのポケットが大小二つ。
底鋲もしっかりしたものである。
 
 
 
取手が丈夫に出来ていて、ヘタりはおろか色褪せもない。雨の中酷使したことも数知れないが、何年も経て平気な顔をしている。
 
 
 
黒は茶に比べて味が目立たない。だからこそ好きでもある。以前BREEの鞄を日光焼きして使っていたが、あのヌメ革から使い込みました感がこれ見よがしに見える気がして苦手になった。黒やダークブラウンであれば比較的わかりにくい。地味にクタってくる感じくらいで、それが控えめで気に入っている。
 
 
傷が目に入った時は、酷い白い傷でもなければ手で撫でるだけ。
ただ、普段から鞄をよく見ておかないと傷には気付くことができない。
気付かなければ撫でることすらままならず、傷は消えない。
傷に気付く必要があり、触る必要があるのだ。
気付くだけで、触るだけでいい。
そうして傷は癒える。