平凡なことを毎日平凡な気持ちで実行することが、すなわち非凡なのである

アンドレ・ジッド

去年の頭、失敗した買い物について書いた。失敗の率は下がったものの、やはり購買のタイミングでは必ず失敗が発生する。だからまた書く。

1,SARTORIA VESTRUCCI

LA FAVOLAの平さんに良いサルトってどこなん?と聞いた時、いくつか知らないサルトが出て来たが、このベストルッチも出て来た一つ。過去にはダニエルデイルイスやステファノベーメルも顧客だったというが、恐らく体制やらが変わり、別物になっているものと思う。

作っている工場はどこなのだろうか。フィレンツェの割にゴージラインが独特なのはハウススタイルらしい。何よりも、着心地がたゆんたゆんなのが嫌だった。生地が好きになれないのもあるが、ナポリ系の印象に近い。店頭で見た時、ゴージラインの奇抜さに心を射抜かれてしまい、生地の軽さとか着心地の微妙さ、肌離れの悪さを感じていたのにそれらの内なる声を無視してしまった。恋は盲目。「この子と一緒に暮らせるんだろうか」と実際にイメージする事が大事なのに、それを怠り、「あの一家の子はいいらしい」という幻想と、一時の彼女の奇妙なダンスに惹かれてしまったのである。

[敗因]

・デザインとブランドに惑わされ、直観を軽視した

2,FIVEONEのオーダージャケット

コンケーブドっぽいつくりの肩が好き(ポエルで失敗済)なのだが、一方で構築的すぎる服も好きでない(FUMIYA HIRANOで失敗済)、という面倒な性分である。しかし一部には芯やフェルトの使い方で肩をコンケーブド風に構築(イザイアやボリオリがたまにやる)し、且つ軽い仕上がりにするメーカーもいる。というわけでそれをオーダーで実現してみようと天下のFIVEONEに依頼して出来たものがこれ。

お試しという事で生地を廉価なものにした結果、ラペルの表情もイマイチだし生地も落ち感がイマイチだし、という事で大失敗。明確なイメージが出来ていないものを言語情報だけで作ろうとするとこうなる。

誤解を招くといけないが、FIVEONE自体はとても良いメーカーで、リングヂャケットレベルに信頼してはいる。私が軽いノリで要件定義を子細に詰めなかったのが敗因。

「アタシとのことは遊びだったのね」って言われたら、おっしゃる通りと言わざるを得ない。娯楽目的で魔改造したおもちゃである。最低。1回しか着なかった。

[敗因]

・服は道具でありおもちゃではないという認識不足

3,SAITO IRONING BOARD HS-07

サイトウ・アイロン・ボード、マダムサイトウ。2万を超える高級アイロン台として古くから一定の地位を持っている。

以前のアイロン台は横にあったがこれはアイロン台が下にあるので、上げ下げに力がいるし、片手で気軽に取ったり置いたりしづらい
生地はナチュラルなのだが、少しひっかかる
その主張いる?
その主張いるか??
しっかりしているのはわかるが畳みづらいし重い

色々と並べ立てているが、最も大きい理由は「シャツのサイズが合わない」という事だった。首の部分も肩の部分もハマらないアイロン台の選び方を見て決定したのだが、そもそも14~15インチの首回りの細い人間の事を考慮していないものなのだろう。基本が欧米人向けなんだろうか?オーバースペック。

お見合いして入籍し、いざ共同生活をはじめてみると相手との文化の違いを受け入れられずに破局したケースである。

[敗因]

・事前の調査、イメージ不足。

直観を大事にしつつ、真面目にふざけず冷静に、事前調査とイメトレをしっかり行う。当たり前の事を当たり前に行う、というのはわかっていても、「それができる自分を保つ」ことの方がよっぽど難しい。

あるいは、これらを失敗ととらえている観点から脱すること、それも解決方法の一つではある。わかっているが、それもまた難しい。迷うが故に三界は城。