ものぐさの餃子。

イタリア代表、イルチアのブラックカーフ

紐靴を履くのが面倒くさい。でもローファーを履くほどカジュアルな日ではない。さらにサイドエラスティックよりももっとドレス度を高めたい。そうした時に出てくるのがレイジーマンである。

イミテーションシューレース、やや間隔が広い気がする。羽根は完全に閉じているが、薄っすら開けたデザイン(ガジアーノのGilbert)でもそれはそれでイヤらしいので、結局ニセモノらしくあれという話
ちゃんと並んで曲線を描いていて綺麗。ヨシノヤで下のパーフォレーションの切り替えまでエラスティックが伸びていないものを見かけたが、何やら大変な技術らしい

ご存じイギリスのジョージ・クレバリーのハイエンドライン、アンソニー・クレバリーのモデル「チャーチル」はレイジーマンの代表作。だが、それ以外で大手がレイジーマンの型を出しているのを多くは見かけない。レイジーマンという呼称自体も昔はそんなに聞いた気がしない。昔は「サイドエラスティックシューズ」と呼ばれていた枠の中におり、あまり良い立場ではなかった。というのもサイドエラスティックの代表格はサラリーマンの代表靴、ギョーザ靴であるからだ。そういえば、ギョーザ靴は相変わらず陽の目を見ない。名前の由来となったモカの皺というかシャーリング、DCブランド全盛期を思わせる謎のエンブレム、圧倒的な軽さと脱ぎ履きのしやすさとコスパ。当然脱ぎ履きが多い日本で普及するが、そのダサさから嫌われていた。というわけなら正面切ってアグリーファッションとしてダッドルックの一要素とかで逆に評価されても良かったのでは、とも思う。もうトレンド終わったけど。

ギョーザ靴の話はもういいや。

レイジーマンは、一方で潔くない。だってイミテーションレースなんか付いていて紐靴のふりをしている。「男らしくない!」というのが平成で、「は?だから何?」というのが令和。それだけの話なんだろうけど。

かかとは球形となり、日本人の足をしっかり意識している
形は何度も検討を重ねられたような完成度で、いやらしさがない

このコルノブルゥのLEOはレイジーマンの名作と言っても過言ではない。ブライスランズで取り扱いがあるが、当然コルノブルゥのトランクショーや福岡のアトリエでも購入できる。

コルノブルゥの清角さんは、都市計画コンサルタントを生業としていたが、29歳でフィレンツェにわたり、ロベルト・ウゴリーニに師事。1年半の修行ののち、帰国後福岡にショップを構え、ビスポーク・MTO・規制靴を展開するに至った。話してみるとかなり職人っぽく、モノを作りこむのが好きそうな人であった。このLEOのトゥシェイプにこだわりがあるようで、グッドイヤーでありながらどうやったら美しいトゥを作れるか腐心している様子だった。

異常に脚入れがしやすい。が、純正シューキーパーの取りだしがタイトで大変
メダリオンは手で打っているらしい。イルチアカーフってそんなに取り扱い注意なのか

コルノブルゥはグッドイヤーもハンドソーンもビスポークもあるわけで、トゥへのそれらの製法の違いが出る。間近で見比べることが出来る。私はプロでないので何がどうとは言えないが、長い事見ていればわかる。”グッドイヤーでは出来ない造形”というのが、縫い方とかのレベルではなく、あるのだ(正直、九部仕立てと十部仕立てばっかりは見分けられないし見分ける意味も無いと思っている)。

ただ、そんな中でもコルノブルゥのこのLEO、抜群にトゥの形が綺麗。ハンドソーンで苦労して吊りこみで表現する起伏に近い造形が保たれている。個人的には30万出してアンソニー・クレバリーを買うなら10万で断然こっちを買うと思う。というか九部仕立てやフルハンドのオーダーにしてもなおコルノブルゥの方が安いと思うと、もはやなぜチャーチルを買うのか。日本製を買え日本製を。サンタリだってめちゃ安いぞ。

シュッとした餃子