数少ない、英国製のサヴィルロウのシャツ。

ジャーミンストリートにはシャツ屋が連なる。Turnbull&AsserHilditch&Key、Budd、Thomas Pink(コロナで倒産)など。

そんな中、1999年創業と比較的新しいブランドで、かつ女性が仕切っているというサヴィルロウでは珍しいシャツ屋。このエマ・ウィリス氏、昔はバンドのボーカルをやりながら訪問営業をしていたとか。娘は女優。バイタリティ溢れる人なのだろう。

昔は名門シャツブランドAlexander Boydを運営していたRAYNER & STURGES(ドレイクスに工場を買収された)で作られているとか聞いたが、2010年には工場を作っているそうなので今はそこで作っているのではないだろうか。イギリス製のシャツというのは数が少ないので、すぐ特定できそう。

襟はシャープ目
金文字ロゴ入りステイ

このスカイブルーの生地は、GIZA45エジプト原綿をスイスで織り上げたもの。サヴィルロウらしくハンドカットしているらしい。

芯はやはりブリティッシュ本場。硬め厚めで、立派なステイが入っている。

カフのステッチの幅や雑な運針の感じ、「イギリス製だな」と思う

T&Aのような3バレルではなくダブルバレル。カフは表のみの接着でイギリス製にしては珍しいと思った。もはやイギリスのジャーミンストリートにもイタリアのシャツ屋が並ぶほどイタリアのシャツが主流なので、そこはモダナイズの一つなのだろうか。

イギリス製のシャツの要所要所を見るたび、イギリスはシャツ作りは苦手なのではないかと思う。そもそもジャーミンストリートもシャツ屋はあるにはあるが、紳士小物や靴屋の方が多い。バッドなんかは最近頑張っているが、ターンブル&アッサーも結局主要顧客はシニア世代で、一部の若手クラシック好きに好かれて多少若返りを果たしているだけだ。

結局イギリスの人々にとって、「シャツはしょせんシャツ」という事なのだろう。スーツの本場であってシャツはその下着でしかない。イギリスの紳士ファッション関係者によれば、昔からフランス製シャツやイタリア製シャツの方が普通の(ブリティッシュ好きではない)服好きには好まれるそうだ。

もはや、お土産みたいなものなのかもしれない。

プラケットフロントは何度でも言うが苦手
襟のトップラインが前立ての曲線に自然につながっている

前立てもブリティッシュらしく表前立て。釦はマザーオブパールとの事。フロント7釦である。

全体的に小綺麗でモダンで、必要十分な要素がある。値段はT&Aが200ポンドであるのに比べ166ポンド(25千円)とやや安い。イギリス製を堪能でき、且つ割と良いシャツを、という事であればとても良い選択肢となる。バッドの既製品もまだ無いし。

しかし、日本では販路が少ない上に知名度が低い。ただ、だいたいセールにかかるので2万円を切る事もあり、手に入れにくいわけでもない。ブリティッシュを経てきた人なら、見かけたついでに買ってみてはどうだろうか。

なんかここ最近ふざけた記事ばかり書いてるので、久しぶりに真面目に書くと逆に馬鹿らしく思えてきた。いや本当、もっと適当に書いていいのになんだろうなこのクソ真面目さは。