イギリスのターンブルアッサーを紹介したので、ついでに。

私はジャーミンストリートでビスポークした経験がないので、emma willisもBuddも持っていない。が、レヴェンスクロフトとかギーヴス&ホークスとかを比べて酒を飲んでいただけあって、まだヒルディッチアンドキーが残っている。

ターンブルアンドアッサーから20年弱後に生まれ、同じジャーミンストリートに店を構えるヒルディッチアンドキー。ブランド名の由来は設立者であるチャールズとグラハムの二人の名前。

イギリスのシャツはターンブルアッサーで話したようにファッションの服ではない上、アイロンを毎日浴びプレスや糊に耐えることを前提に作られているのか生地は重く、耐久性が高い。

で、ロンドンストライプである。細かく言うと違う(細かい色違いのオルタネイト)がロンドンストライプにする。

ロンドンストライプは和名であり、欧米では「ベンガルストライプ」。だからといってロンドンストライプって言葉が嫌いなわけではない。ロンドンに住んでる英国人が自分の着てるストライプにロンドンの名を付けたりはしないだろうことは想像がつく。イメージだけど。私が言いたいのは、インドのベンガル地方での染め文化が欧米の人間にとって「良い」「風情がある」ように見なされたからこういう冠を付けられているのであって、それはアメリカが強くなるまでの17世紀、東インド会社が大量に生産をゴリ押ししたアヘンと一緒に輸出していた歴史が背景にあるんだろうね、ってことはその柄ってもっとサイケだったんじゃないかな、あるいは単純な縞模様なのに実はトリップ効果があるんじゃないかみたいな、そういう話をしたいのであって。「現地ではロンドンストライプとは言わないよ」じゃないんだ、「ベンガルストライプって現地では呼んでたりするよね」なんだよ。普通のただの話なんだよ。「ほら武器ではない、普通に話がしたい、ただ普通に話がしたい」って坂本慎太郎だって歌ってんだろ。

俺は欧米厨じゃない。ただのオタクだ。

さて、ディティールを見て落ち着いていこう。

袖は当然手縫いであるはずがない。そんなことは聞いてはいけない。

前立てはある。フォーマル。ボタンはマザーオブパール。大き目だ。

袖はツインバレル。イギリスのシャツに多い。角落としをツインバレルと呼んだり、ナポリに多いとか言ってたり、巷は「ツインバレル」って言葉を適当に扱いすぎだ。

カフリンクスを付けるフレンチカフに対しての釦で留めるバレルカフ、作ってる途中の樽に似てるから「バレル」なのであって、ウィスキー醸造が盛んなイギリス人の発想だろう。

2釦の方がよりフォーマルであり、カッティングエッジの方がよりフォーマルらしい。丸みがあるとフォーマル度が下がるのはわかるけど、釦数が減るとフォーマル度が減るのは面白い。3釦はやり過ぎな気がするので、このバランス感覚はいつか解明したい。

はい出たスプリットヨーク!ロンドンストライプのスプリットヨーク大好きです!末広がり!

台襟が上向いてるわけでもなく襟羽根に曲線が多用されているわけでもなく本当にムスッとした奴だ。

なのに襟には縦にステッチが入っている。芯留め?教えて詳しい人。

このシャツ、使い込んだので生地が結構やわやわになっているのだけれど、タイドアップすると本来の自分を思い出したかのようにシャッキリする。これがとても面白くて、その上襟に色気が無いので死んだように着れる。エジンバラのネイビースーツにこれ合わせると「今日はちょっと慎重に自分の仕事に集中したいし声かけようとする人はそれなりに準備して覚悟してほしいんだけど」みたいな印象を発するような気がする。全然そうは思われてないんだろうけど。本当にイギリスのシャツのこういう所は好もしい。

で、生地がやわくなっているので釦を外してもなかなか良い。ただ合わせるものを間違えると「わざとらしい隙」みたいなものになるので、ニットの下に着る時くらいしか釦は外さない。

この辺りの気難しさはイギリスのものだからなんだろうか。これもまた面白いとは思うけど。

何にせよ、最近Cleeve of londonもDrake’sのおかげで盛り返してきているし、イギリスのシャツ(とかスーツとか)の面々、もうちょっと市場で頑張ってほしい。