サンカッケー。

サンリミットに続き、最近よく見かけるドメスティックブランドである。

デザイナーの尾崎氏は、元エディフィスのバイヤーで、フィルメランジェの立ち上げメンバー。ということは、今を時めくオーラリーのデザイナー岩井氏のフィルメランジェ時代の先輩だろうし、エディフィスでCOMOLIの小森氏にも会っているんだろう。この辺りはだいたい繋がっていて、昔アタッチメント周りのブランドのデザイナーがすべて繋がっていたように、業界は狭いな、とか話しているんだろうか。

さておき、サンカッケーはオーラリーやらCOMOLIやらと違うと思う。売上だ。オーラリーもCOMOLIも、今や売れっ子ブランドとなっているがサンカッケーは違う。失礼だが売れている兆しがない。全体的な印象だけれど、職人寄りで服好きの服好きによるブランドなのではないかと思ってしまう。フランクリンテーラードとかと同じイメージ。

 

生地が特殊。硬めのぱりっとした紙とオックスフォードの中間っぽい生地で面白い。

アイクベーハーさながらのダイヤモンドステッチに、袖の手縫い付け、スプリットヨークなど、ディティールは凝っている。

服好きがこういうディティールを見つけて「おっ」と思わせるために苦労しているのだろう。

 

と言っても一番最初に目に付いたのがこのガゼット。

なんでこんなことしたのかと思ったんだけどやっぱりサンカッケーっていうブランド名だからだろうか?取ってしまおうかと悩んだのだが、呪われそうな気もするしやめている。

 

なんかこの前立ての仕様も名前があったような・・・。

釦は3穴で、釦の縫い糸が三角形に。ここにもサンカッケー、というわけだ。このくらいの遊び心であれば工程増にはならなそう。

 

襟が隠しボタンダウンになっているのが気に入っている。

隠しボタンダウン、個人的には90年代にアルマーニが地味に当てたイメージ。定番商品でもあったはず。アメリカ的なものと90年代(アパレルの)ミニマリズムの融合として、隠しボタンダウンはアルマーニで生まれる必然があったということだろうか。

たまに留めにくい。

 

特殊な生地とこの仕上げということで、とても面白みがあって良いシャツなのだけれど、一見普通。

スリム目なパターンも個人的には小襟の雰囲気と合っていて好みである。

ただ一つ、ガゼットだけが悩みであり、着てみてここが目についた時に「この気分ではない」となってしまったりするのが難しい。でもこれを外すのはデザイナーの魂を削るような行為の気がする。これまた悩ましいのが、ガゼットがビビッドな色でなくてダークグレーの色なので、靴や小物の合わせ方次第では適当な印象になりがちな粗目の生地の白シャツが突然締まって見えたりして面白い。

玄人向けのシャツだ。

刺客。

普段着のフリをして試してくる。

ドメスティックブランドはこういうのがたまにいるから見逃せない。

“俺は試されてる 今も こんな時にも”byゆらゆら帝国