シャツNo.119 Giovanni Inglese ジョバンニ・イングレーゼのシャツ


最高峰というものを一度体験すると、それ以外のものが序列のどこに位置づけられるのかがわかるようになる。
そう聞いたことがある。
現存するナポリシャツのうち、アンナ・マトッツォと双璧を成す、ナポリシャツの最高峰。
それが自分のジョバンニ・イングレーゼへの印象である。
そこまでするか、という多くの箇所のハンドによる仕上げ。
シルクを用いた糸。
人間の動きにあった曲線。
シャツの端正な佇まいの中に、ナポリのアンナ・マトッツォのような独特な色気を湛えている。
細かく見ると手作業の怨念が刻まれているのがわかる。
触れば異様に良い生地を使っているのがわかる。
しかし全体としてはコンパクトにおさまり、
あくまでもシャツ本来の爽やかさを保つ。
そんなシャツである。
ちなみに自分が今まで見た既成シャツの中では最も高い部類に入り、
6万を軽く超えてくるオールハンドメイドのシャツも展開していたりする。
一般の方々は鳩山首相の一件でひょっとしたら覚えているかもしれない。
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白いシャツである。
襟の形、というか羽根の曲線が綺麗。
身頃に付くかつかないかのところで止まるのが良い。
ちなみに第一ボタンから第二ボタンまでの距離は9.5cm、
第二ボタン以降は9cmの幅。
ボタンの幅はフランク&アイリーンの時にでもやろう。(結局買った)
DSC_3580.jpg
襟ぐりはかなり内側に入り込んでおり、Finamoreなんかを思わせる。
それからこれだとちょうど見えないが、肩山にギャザーが入っている。
さて、縫い目は普通であるように見えるだろうか。
よく見るとわかるが、特殊な縫い方で袖とヨーク・前身頃の合わせを縫っている。
というか、それどころではない。
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後ろ身頃とヨーク、そして台襟もそれで縫っている。
いや、縫っているのだろうか。
これはなんなんだろう。
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「これ」である。
玉のようなステッチがわかるだろうか。
未だに名前を知らないが、高級なナポリシャツに多い頻度で登場する。
Finamoreの高級ライン(黒タグ)とかではヨークに使われていた。
ソブリンのシャツでも見たことがある。
正直言って個人的に見た目は気持ち悪いと思う。
いや、シルクだからか・・・?(イングレーゼは縫い糸が何故かシルク)
それともやっぱり「ハンドメイド万歳」って喜んでおくべき・・・?
この縫い方って機能面で何か良いことがあるのだろうか。
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このステッチはあらゆる所に登場する。
この剣ボロの部分もそう。
(ていうかカフへのギャザーすげー)
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身頃は全てそのステッチ。
ガゼットは無いがそこもカンヌキで補完。
(ていうか裾全部手縫いでまつってあるすげー。意味はあるのか・・・?)
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流石は最高峰。
あらゆる所に光が散りばめられた手仕事の宝石箱。
生地を触ってもらえないのが残念だが、フワっとしながら重みがある良い生地。
だが、
だがしかし私には無理だ。
アンナ・マトッツォもそうだけど、ここまで手仕事で運動量をもたせ、色気を出されると完全に負ける。
痩せた日本人が着てはいけない、厚い色気を持たぬものが纏ってはいけないシャツになる。
こうして、ヨウジヤマモトに次ぐ「着たいけど着られないシリーズ」は増えていく。


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9 Comments

  1. EZMD様
    日本からしたらお値打ち価格ですね。現地価格ではわかりませんが…。
    それにしてもピアースブロスナンはわかりますがシャーリーズ・セロンが何故に、と思ってしまいます。マスキュリンなスタイルが好きなんでしょうか。
    イタリアの職人も日本同様、高齢化で消えていっております。どうぞ今のうちに、楽しんでください。

  2. ソフィア・コッポラ。確かにシャツのイメージありますね。そしてやはりシャルベに行くんですね。。イングレーゼは帰郷の際の近所の店にお父上につきあったという感じでした。トランプの就任式やウイリアム王子の結婚式のシャツ作ったという話もありますが。。140の生地で一枚300euro強でした。高いというか、お値打ちというか。。実はシャツ以外もサルトリアを試していて、専らサンプルで作った吊しをセール時期にあたるばかりなんですが、何処に行っても写真があるのが、シャーリーズ・セロンとピアーズブロスナン。何とも微妙な組合せ。ミラノではジャンニ・カンパーニャが良かったですが、表通りの店から奥に越してしまって大丈夫かなあという感じです。
    トゥルッツィ、デパートのリナシェンテなどで既成で扱っているイメージ強くて試していません。マロル、ボローニャですが良さそうですね。
    イタリアでは、シャツも自分の店でオーダーで作る習慣が結構あります。
    これは何ともいえず良いものですが、いずれは消えてしまいそうな気がします。

  3. EZMD様
    シニスカルキ、ご存じであるだけでも相当ですね。アンナカミチェリアなんか情報入ってきませんし…。
    コッポラ、イングレーゼでもやってたんですね。彼女、シャツ好きなイメージがあるんですがシャルベ別注作る位シャルベが好きと聞いていたので、イタリアは手を出さないのかと思っていました。
    ミラノでしたら老舗ですが最近トゥルッツィはいかがでしょうか?あとは少し下ってマロルとか。
    今後とも、よろしくお願いします。

  4. 早速有難うございます。
    イタリア各地に残る手仕事を着れるのは醍醐味で色々と試してみようとしています。ミラノも流石にシニスカルキのような高価なものは手がでませんがAnna Camicria Dal 1960とか、機会があればと思っています。
    Ingleseは、セレブ?受けが良いらしくて 丁度来た手紙といって見せてくれたのがフランシス・コッポラからの礼状だったり。コッポラ家はGinosaの近所出身だからでもありますが。ソフィアの写真見せてもらったり面白かったです。
    ナポリの服が表に出ることが多いですが、スタイルとしては男振りを誇示しないミラノの方が好きですね。今回、色んなディテール、参考になりました。有難うございます。

  5. EZMD様
    こんにちは。遠方よりお運びいただきありがとうございます。
    イングレーゼ、今あるカミチェリアの中でもトップクラスだと思いますので、良い買い物だと思います。
    Buriniがまだ買えるとは羨ましい限りです。今やBrioni下のシャツはピンキリなので、FRAYではなくあの手の北の緊張感を少し残したマシンメイドシャツは貴重ですよね。

  6. こんにちは。ミラノ駐在しているものです。イングレーゼ、イースターの休みにGinosaの街まで行ってアポとって作ってきました。休みなのに奥様と二人で宿まで迎えに来てくれて、出来上がったシャツも言わずもがな素晴らしかったです。イタリアのシャツでは他にはBuriniが好きですね。老舗の店に在庫が細々残っているのを買ってます。

  7. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    脇はホシでやる事の機能的メリットはあんまりなさそうですねぇ。苦笑
    これだけ手間かけてるぜ!って主張くらいでしょうかww
    必要な場所に必要な事を、ってやると
    ミシンと手仕事のミックスになり、そのバランスが大事になってきます。
    うちのシャツ、色々問題が起きてまだ配達されてませんが
    ご覧になって、そのバランス具合、見てみてください。(宣伝。笑)

  8. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    星縫い!
    これはありがたいです、こういうの調べようにも言葉がないとどうにもできないものでして。
    本星とか色々と名前があるみたいですね。
    身頃脇はこの縫いで、裾はそのようにも見えますがただまつってるだけかもです。
    そのような機能性があるとは。
    糸が糸なだけに見た目に響きますけど、大事な心遣いですね。

  9. SECRET: 0
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    これ、日本ではホシ、と呼ばれるステッチです。
    返し縫いなので、通常の並縫いより糸が長く入ります。
    その結果、力がかかった時にそれを分散させ、
    ストレスを感じにくくなる、という利点があります。
    襟付けでどれくらいの差が出るのかは試した事ないのですが、
    袖ぐりは歴然ですよね。
    裾は、、、わかりません。汗

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