ビジネスシーンでは、「シワがついているシャツを着ている」事で相手へ与える印象は大概マイナスとなる。

カジュアルシャツはその限りではない。

洋服の青山のノンアイロンマックスシャツ(1000万枚超)や、はるやまHDのiシャツ(500万枚超)など、ノンアイロンシャツは紳士服市場で存在感が大きい。これは、「シワが入っているシャツはNG、けどアイロンは面倒」という家庭の事情を表している。私自身も綿100%ノンアイロンの土井縫工所は良く着ていたし、今のメリノウールの流れから、WEBAのウールの後継でよりシワに強いものも出てくるかもしれない。

今回の話は、「ドレスシャツって洗い晒しで着ちゃダメ?」という話だ。

結論から言うと、「ある種の柄であれば、アイロンをかけなくてもいける。ただし洗濯と干し方による」となる。

これ以降に掲載する写真のシャツは全て、「シャツはランドリーバッグに入れ、通常コース且つ脱水は1分以内、ハンギングし手で軽く成形して自然乾燥」で処置したものだ。アイロンは一切使っていない。

生地は綿66%、リネン34%のSOKTAS。麻混の方がシワが入りやすい印象。
平置きで近くで見るとシワがわかる。

この状態でタイドアップしたりする。誰かに突っ込まれた事はない。一般の方々はさておき、服飾通の方々にお会いした時でも言及されたことはない。気付かないのだろう(後述の白シャツはバレたことがある)。

私はベンガルストライプ(ロンドンストライプ)が好きなのだが、好きな理由の一つは「シワがわかりにくいこと」。誇らしげに自分が無精である事を語るのもいかがなものかと思うのだが。

次は鎌倉シャツの400番手シャツ。高番手のブロード白シャツのシワだ。

前立てのエッジがピシッとしていないとダメ、という人は多いのでは。

平置きすると身頃のシワがよくわかる。

個人的にはこのくらいのシワは気になる。というのも、高番手なシャツの場合、合わせるパンツやジャケットもウーステッド系になりがちで、ピシッとした印象のものを選びがちになり、シワだけが統一感を乱すものになる。そうなるとハズシではなくハズレとなる。

しかしこのくらいでも着る人は着る。無頓着に着る人はさておき、その着方がしっかりと型にハマってるタイプの人もいる。

イタリアに駐在していたおっさんが「割と洗い晒しで着てるよ」と言っており、最初は嘘だろと思った。が、それ以降会うたびに必ず洗い晒しのシャツを合わせて着てきて、例外なく悪い印象は無かった。この人は「ボタンダウンのボタン外し」「小剣ずらし」「ネクタイずらし」を自然に使いこなす洒落者で、その場合、シワもリラックス感にうまく吸収していたのかもしれない。

また、とあるサーファー兼シャツ屋は「アイロンなしでいけますよ」と言う。何度か見たが、確かにそのまま商談も行けそう、と思わせるものだった。ヒゲとか髪質では、と思う事は無きにしも非ずだが。

南シャツのトマスメイソン140双はこんな感じ。

ただ、前述したがキモは脱水にある。シワは脱水時に付くので、理想を言えば、すすぎ後に脱水せず水を吸った状態でハンギングし、軽く形を整えて干すのが最も良いのだろう。南さんは手洗いで洗って干しているから脱水などしていないのかもしれない。

ちなみに土井縫工所のおススメでは脱水は30秒だった。

ノンアイロンシャツは樹脂なりの加工、又はその化繊混の素材により、「死んでいる」ように見える。それはピシッとしている表情、というよりも、ふくらみと豊かさがもたらす生地の陰影がなく、無表情の印象に近い。接着芯が張り付いた生地の裏面のような。それと比べるなら、多少化粧をサボっても生きた表情の方が、個人的には好感が持てる。ビジネスでその感覚が通用するかは知らないが。