南シャツビスポーク WEBAの”LIMITLESS”コレクション Super130メリノウールシャツ、それと南シャツの襟型について

南シャツにて、WEBAのメリノウール生地のシャツを仕立てた。

洗い晒し。

WEBAは1944年からあるスイスの生地ブランド。割と中価格帯のコットンのイメージだったが、このWEBAのLIMITLESSシリーズは、最高級の素材を扱うライン。その中で「オッ」と思ったのがこれ、最高級メリノウールのsuper130-150を使って防シワ、UV保護、防臭、体温・湿度調節がある程度出来る、ウォッシャブルウール生地

以前、ウールシャツで言うと、Wool&princeのシャツについて書いた。ただあちらはカジュアルなので素材感・糸の細さが違う。が、基本的にはあのコンセプトと同じ。こちらはドレスシャツ用の生地という事なので、そんなハイカウントウールで防シワって簡単に出来るのか?というのが疑問だった。

結論から言うと出来ませんでした以前の記事の洗って干したシャツと見比べて、無地ドレスシャツとしてこれはリンクルフリーとは言い難い。

俗に言うハイグラルエキスパンション?結局吸湿性という良さを活かす結果、スケールを残す事になり、こういう結果になるのだろうか。この辺は繊維製品品質管理士の人にでも聞いてみたい。どうですか。(あなたですあなた)

アイロンをかけた。
ギャザーの降り方が甘やか。

布帛のウールの良さの一つに、「落ち感」がある。コットンやリネンの布帛の「張り感」に対比しての「落ち感」。なんやねんていうのはMBさんの文章でも読んでください。http://www.neqwsnet-japan.info/?p=20749

服屋、特にテーラー系や生地に強い店にこのシャツを着ていくと、7割「それは何の素材ですか?」と問われる。普通のシャツとは異なるドレープ感に気が付くのだろう。身体の動きで入るシワが薄手のウーステッドスーツに近い。ただ違いは生地に携わる人でないとわからない。それ以外の人に「これウールです」と言うと驚く。個人的には、鎖の落ち方、と思っている。

ちなみに着心地はと言うと、普通のシャツと遜色ない。暑いのでは?と思ってたけども、メリノウールカットソーと同様に、熱を一瞬孕む気がするけど暑いという体感はない。触り心地はやはりコットンとは違うし、生地の弾性が全く違う。テロンとしているので多少首回りにつく感じはあるが、蒸散する機能性が高いので汗などは気にならない。

見た目はオックスフォードっぽい織りに見えるが、結構メランジ。

WEBAのLIMITLESSはサックスブルーだけでも複数あったが、いずれも見た感じは普通のシャツ地と見紛う出来で、メリノウールもここまで来たか、と思わされた。

メリノウールカットソーはワークマンが連日完売している通りアツい戦場となっているが、メリノウールシャツは割とまだ黎明期。Auraleeは最近大ぶりなsuper120sのウールシャツを作っていたが黒一色。colinaはSuper160sのポプリンでウォッシャブルウールシャツを作っているようだがまだレディースのみの様子。WRAVEEというウールシャツに特化したブランドも出来るようで、まだまだコッカラッス!

ところで、ここからは南シャツの襟型の話。

今までビスポークで作るにあたり、襟型を何度か変更している。スーパーリーバのシャツを作った際などは、ノータイでも襟が立ち上がる形でお願いをしている。今回はその襟型を変更した。南さん曰く、「元々の形」である。

WEBAのシャツ。
カルロリーバの方。

細かく見ると襟羽根の角度が違う…?と思うかもしれないが、これは全く違う襟型である。設計思想から違う。なんならジャケットまで着ないとどうなるかが説明できない。ハンギングで明らかにわかるだろうと思うのは、横から見た絵である。

WEBAを横から。
カルロリーバを横から。

前台襟の上端部分(左右の襟羽根の接する部分)が凹んでいるのがわかるだろうか。南シャツはこの「立体感をなくした襟」を元々のものとして採用していたそうだ。喉仏にあたらず、首の動きも邪魔せず、リラックスした印象の襟型。

以前私はISAIAのGREGORYというモデルが好きでよく着ていた。軽いコンケーブドショルダーになっており、ひなびた身体にとっての軽いパワースーツのつもりで着たいたのだが、もう年になり、そういったビシっとした服というものに疲れてきた。Vゾーンにしても、しっかりタイドアップして立体感を出していたが、色々と思う所が出て来た。ビシっとキメすぎてダサい、みたいな意見もそうはそうなのだが、それより大きい理由もある。

ある日、服の技術師の人に「紳士服はあらゆる箇所、場面に男根のメタファーが存在する」と言われ、神経質になってしまった。確かにエドワード期より前、紳士靴は男性器を表すものとして競い合った(ナニを?)時代があったそうだ。そういえば・・・えっ・・・?ビシっと硬めにタイドアップしているこのVゾーンって・・・屹立した勝負下着・・・?

文明の発展史上、コンテクスト上は逃れられないのだから受け止めた上で自意識の問題と区別し検討するべき、とかが落としどころなんだけど、なんかこう今はまだ整理できておらず無理。だからブリティッシュ系のドレススタイルが全部辛くなってきた。ブリティッシュ大好きな友人にこの話をしたら「ありえない話し!どうせペニスを見せつけるなら屹立させるべし!その方がかっこいいし!それが変態紳士!」と押韻されてしまった。裏ではナヨナヨした話法でかわいく振る舞い突然手をつなぐ手法で女を寝取るサイクス=ピコ野郎が良く言うなと思った。

本当はダルクオーレの手法とか、ナポリタンやフィオレンティーニスタイルとか、リラクシングな傾向と”フラットデザイン”的なVゾーンのトレンドについては語りたい事がたくさんある。けどそれはまた別の機会に。

このリラックスした襟型を通じて、南さんという人が少しわかってきた気がする。本人がサーフィンやってる所もそれを裏付ける。リラックスした雰囲気で気取らない柔軟性を持つ、そんな性質がこういう所にも表れているんだなと。良く知らないんだけど。

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3件のコメント

  1. Matさま
    情報ありがとうございます。オンラインで見た印象では生地の質に不安が残りますが、行く機会があったら拝見してみますね。

  2. 宮下パークのFirsthand さんで売ってるオリジナルのShirt が安くてクオリティも高いらしいですがbengalさんの目でみてどんなものなのか知りたいです。

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