LABO vol.5 30s Vintage cotton-linen Shirt

80年以上前のビンテージフレンチコットンリネン。

一部の好事家には「あれね」とわかる。ビンテージってだけで盲目的にありがたがる人がいるけれど、品質は悪い。フランクリーダーをいくつか着た事がある人ならわかるだろうと思う。触り心地は良くないが、質感が独特でその当時にしかない、それが魅力なんだろう。

コットンの最近の帆布だと、うねり方が統一されている感じなんだけど、これは妙。だからアルチザンっぽくなるんだけど。ボコボコ、ゴワゴワの質感。アーミッシュみたいなスタイル。

近い所だとフランクリーダーのベッドリネンシャツが思い出されるんだろうけど、あれとは生地感が全く違う。というのも、ベッドリネンシャツは1960年代のシーツが多く、ほぼコットン100%。この生地はその年代より前、つまりリネン100%シーツが徐々にコットンに置き換わっていく時代の最中の混ぜ物だ。だからより粗悪。仕立てる前に洗っておいてよかった。どうもかなり縮んだらしい。

アルチザンっぽい生成りのシャツはジョンスケルトンとかポールハーンデンとか割とあるけど、このシャツの場合は製品化したら間違いなく「着心地がちょっと…」となる。もうわけわかんない。ゴワゴワ。最高。つまりはポエルが良くやる生地感。

 

前回vol.4のシャツ同様に、ヨークは取らずにダーツで処理し、第二釦は拝み仕様。襟羽根は小襟かノーカラーかで迷ったが、生地が主役なのでこざかしい羽根はやめノーカラー。

割と気に入っている出来だが、生地が一点限りなのでもう再現が出来ない。

でもこんな「え?スーツでしょ?ていうかキバタ?」みたいな生地持ち込んできて「洗ってシャツを縫え」とか頼んでくる顧客いやだ。きっと私への怒りでこのバンドカラ―を縫う時に一針一針私を縫い付けるつもりでミシンを踏んでいたのではないか。

南さんとしても「これはコートとかセットアップとかでは…?」という印象だった。でもこの通りちゃんと仕事はしてくれた。生地に合致した釦をわざわざ貝で見付けてくれて、小さいガゼットもそつなくこなし、剣ボロもちゃんと仕上げてくる。

 

個人的にイメージソースはジム・ジャームッシュの「リミッツ・オブ・コントロール」で孤独な男の協力者、”ヴァイオリン”が元々の着想元。だから合わせとしては黒い太めのパンツに、裾を出してこのシャツを着て、上からジャケット、それも黒の厚めの生地で5釦とか・・・ド直球にOld Tailoerd Jacket系、またはBergfabelのチロリアンみたいな。そんなのを適当に釦を引っ掛けるイメージだった。敢えてFumiya Hiranoの3釦のトップ留めやったら「普段ザラついた格好なのに親から受け継いだジャケットをオフの日に美術館行くからって妻に着せられちゃったおっさん」感が存外に面白かったからそれもアリかなと思ってるんだけど。

 

ちなみにこれもアルチザンあるあるなんだけど、このシャツ、たぶん立ちますね。そんな硬い服ばっかりだなホントに。