CPOシャツはシャツだ。バンドカラーシャツもシャツだ。シャツコートもシャツだ。俺のシャツは、奴からもらったシャツだ…それはBOSSの路上だ。

厚めの生地でバンドカラーのシャツコートは…?シャツだろう。本当か?コート生地でも?それはシャツではないのでは?でも作るのはシャツ屋だし、シャツみたいに出来るんじゃないのか?シャツ屋って、誰が請けるんだそんなん?え?そりゃ南さんでしょ?だって、布を与えてシャツですって言えば、シャツでしょ?シャツのビスポーク屋でしょ?え?話の流れでそうなったら当然やってくれるよね?え?ただの嫌がらせじゃないかって?

よく作ってくれたよこんなもの。だって普通のシャツの値段で作れるような仕様じゃないじゃん、副資材だって桁違ってくるし。今までは、色々とめちゃなお願いをしてもちゃんとシャツだったし、はた迷惑な生地でもシャツだったし、ギリギリのところで何とかシャツだった。

でもこれは・・・?

シャツコートのパターンをベースに、ノーカラーに。

いやこれはコートだろ。

だって生地目付、630gだし。良質なウールだけど、コート地だし。いくら一枚仕立てだからっても、オラツィオルチアーノだって今どきこんなん作れないって。

ダメ押しとばかりにビンテージシャツのディティールを盛り込む嫌な客。本当に南さんすいません。この仕様で誰が得するのか?と思い悩みながら縫い続け、折った針は10本は下らないと思います。毎回毎回、やってみましょう、とか言ってにこやかに受けてくれるんで、本当にこの人大丈夫かなと(良い意味で)思います。

ずっとノーカラーコートをバサッと着る事に憧れていたので、良かった。軽く羽織ってどこかに出かけるのにちょうどいい。めっちゃ生地重いはずなんだけど。しかも着丈まで長くしてもらって。でも一枚仕立てなので気分だけは軽やか。

水牛7釦。
インプリーツ。

サイジングはややオーバー気味に作っていただいたが、結局内側に着る服が薄いシャツやカットソーになると思うので肩幅を少し内側に修正した。

ノーカラーのコートってメンズよりレディスの方が一般的なイメージがある。その昔のギャルソンオムでサージ生地のノーカラーのコートがあり、以降ノーカラーコートが欲しいとふんわり思っていたが、見かけるのはレディスのものばかり。稀にアルチザン系で見るとやたら朽ちていたり錆びていたりするし、モード系はパッドがゴリゴリに入っていてスタンドカラー、みたいな例が多く、こういったものが無かった。

まだLa vera sartoria napoletanaの頃、割と地厚の生地で芯無しのジャケット・コートを作るのが上手いと思っていたオラツィオにでもいつか頼むか、とか思っていたら、舵取りがピノになり銘とともに路線や質も変わってしまった。今どきこんなもんやらないだろう。

袖裏もなし。
NIKKEの生地は好きなものが多い。
縦型パッチ。可愛げのある形。

シャツらしさが残ってるのはたぶん、「裏地が無い」「釦が小さめ・多い」位だと思う。シャツです、とはほぼ言えない。襟を変えても恐らくそうだろう。という事で、「一般的なシャツ」の要素はほぼ生地が決めていると考えて間違いない。布帛の薄手の生地のトップスの前立てに釦が付いたもの、それがシャツなのだ。

釦を留める位置次第で、さばき(風にたなびく様も)が変わってくる。と言ってもブリンブリンなので、どう考えてもシャツではないが、割と良いものが作れたと思っている。