我々フク族にとっての”洗濯”は、重点家事の一つである。フク族にとって、服と関わる機会の密度は高く、洗濯は主たる機会の一つだからだ。
普段の生活では、服を意識する機会(服について考える機会)というのは多くない。
- 買う時
- 着る時
- 洗濯して収納する時
- 売る時
これくらい。だからこそ、フク族はこのタイミングに熱狂する。服にかけるコストの分、想いも深い。だがSNSに上がるシーンで最も多いのは、“着る時”と“買う時“だろう。買った報告は人の購買意欲に火をつけるし、売る時はC2Cの各種マーケットに写真が上がっているとおり。
では、洗濯や収納の時はどうか。洗濯は、クリーニング屋の類の専門職のブログでもない限り見かけることは少ない。収納は、断捨離しました〜ミニマリスト万歳!とか一週間着回すクローゼットの精鋭!みたいな”見せられるクローゼット”の場合だけだろう。いずれにしても”映えている”ことが必要。
洗濯中のビショビショの服や、クローゼットの奥で乱れた服は、現実ではよく目にしても、”映えない”故に陽の目を見ない。洗濯行為は秘め事、WEBにもあがらぬ二者の蜜月。熱く迸る水が一面を覆った毛を濡らし、乱れた布が優しい力により掻き回され、濡れそぼるコットンに突き刺さる硬いハンガー…。
皆どのようにして濡れ衣に接しているのか、気になっているはずだ。私も知りたい。というわけでフク族の中では洗濯話が盛り上がる。というか最近「やっぱりお湯でしか洗わないの?」「1-2時間かけて洗濯するの?」「全部アイロンする?」と聞かれるので、私はイタリアのマンマではない、直伝のポモドーロレシピはなく青い洞窟を食らふ、と言っておく必要がある。
だが自分の性行為が普通かどうかわからないように、自分の洗濯も普通ではないかもしれない。
つらつらと書くと長いので、箇条書きでまとめる。
洗濯には「分離」と「禊ぎ」と「漂白」の3つの目的があると思っている。
①「分離」は、布と汚れを分離すること
→主に界面活性剤、水流、遠心力その他で汚れを浮かし、水に溶かして排出する
②「禊ぎ」は個人の気持ちをハレやかにすることで、嗜好に依る
→大容量の水や、直射日光、柔軟剤、蛍光増白剤入り漂白剤など、手段による効果―――「汚れが消えた気がする」「滅菌できた気がする」―――の多寡は人それぞれである
③「漂白」とは色素と布の結合を破壊すること
→色素の二重結合状態を破壊すること、塩素/酸素系漂白剤を使って色素汚れを脱色する
厳密に言えばこれ以外に「加工」の要素もある。除去(布と結合した汚れをまるごと取り去ること)を含めたこの行為は本来の状態からの変質を伴うが、家庭で洗濯工程において意識的に(ウォッシュ加工など)やる人は少ないと思うので今回は含まない。※私は洗浄にこの要素を含ませて使うことを「荒く洗う」としている
また洗濯は前戯が最も大事であるように、前提が大事。
・基本的には洗濯ネットに入れる
・水量は多め~最大にする、水温は常温
・場合に応じて液体と粉を使い分ける
・ポイントで汚れがある場合はウタマロやザウト、オキシクリーンで予洗いを行う
・欧州製の彩度が高い色物(特に後染め機械染め)を洗濯する際はベックマンシートを使う
・シルクと(ワーク系以外の)女性の服全般は必ずテストする
以下が手順。計40分。
・まずシャツとシャツ以外に分ける。シャツは予洗いを行い自動でコースを組んだ後に脱水1分で設定するため。
・洗濯ネットは生地の硬さ厚さに応じて種類ごとに分けて入れる。時間の余裕があればネット1つに1着で入れる。荒く洗いたい(生地を摩擦で多少痛めても汚れ落ちを重視したい)ものはネットに入れない。
・洗剤はナノックスとワイドハイター(AWは液体、SSは液体か粉)。
・一旦自動で洗濯機をスタート。すると水量が算出されるので増やしてGO。(ビートウォッシュは節水なのか水量少な目なのが腹立つ)
・デリケートだとみなしたものはデリケートコースでエマールを使う。
禊を意識する場合は(今は)YINDIGO AMの洗剤を使う。
洗濯は毎日する。多ければ1日に何度もする。だって気持ちイイから。
部屋干しや浴室乾燥機を使う方が賢いと言う人はいるものの、私は外に干す事もある。だって何事も野外は気持ちイイから。INTO THE WILD。(((深い意味はない)))
紫外線は殺菌効果がある一方で退色させてしまう恐れもある。シルクや一部の色モノ柄モノは当然避けるべしだし、よくはない。
でも、服が多少傷んでも良いと思っている。
私は洗濯表示でバツが付いていても、洗う。洗濯表示のバツは「洗った際にどうなっても責任とれないよ」という意思なので、俺が!この子の!責任を!取る!スタイルなら関係ない。だからビスポークスーツもカシミヤのシャツジャケットも、洗剤で口説いてなし崩し的にそのまま洗濯機インする。
洗濯をすればするほど、服は痛む。しかし洗濯しなければそれはそれで痛む。ならば出来るだけ手をかけたい。そうして一緒に年を取っていってるような雰囲気にして勝手なストーリーで自己満足したい。
ここで一句、ここで一句。(ライブ中の向井秀徳)
やは布の熱き繊維に触れも見でさびしからずやモテを説く君。
は?なんだって?月が綺麗ですね?ふざけるな、今すぐ布を揉みしだき荒々しく洗え、大容量の水で強く抱きしめ、熱い洗剤をドクドクと迸らせ、白日の元にシャツをはだけさせてハンガーを突き刺せ。
皆さんもみだれ布に触れ、瑞々しい情を交わしてみてはいかがだろうか。
コメントを残す