「お願いだ。
金を貸しておくれ。
あの子にプロポーズするために金が必要なんだ。
絶対に返す。
俺が金を返せなければ、俺の胸の肉を1ポンドそぎ落として持っていくがいい。
法の下の平等に誓って契約する。」
「ヴェニスの商人」の細部はあまり思い出せない。
覚えているのは、人肉を担保に金を貸した金融屋は、
最後には屁理屈と勢い、空気によって追い込まれたということだけだ。
その昔、友人が少なかった私は、唯一友人だとされた人間に頼まれ、約束した。
「○○をするのに力を貸してくれよ、分け前は絶対にやるから。」
裏切られた。
彼は案件の後に、ほかの友人と称する者と共に、小学生特有の排他的な空気を作り、私の約束を反故にした。
その上で私を脅し、少年期の私はそうして悪の道へと引きずりこまれていった。
彼は、ゴトの仕事で暮らしてる時に同僚がお上に殺されて驚いたのか、蒸発してしまった。
行方はわからない。
どこかでスカーフェイスを演じているのかもしれない。
あるいは海の底でひといきの休憩中なのかもしれない。
東京は無関心なのでそういう人生があったことを誰も教えてはくれない。
ベネチアはどうだろう。
やさしい抱擁のごとく見守ってくれるだろうか。
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ベネチアのBARENA。
Slanegaブレザーとかいわれているもの。
ニットジャケットであり、使い倒しているものの一つである。
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生地はフォルメンテーラというウール×ナイロンの8:2混紡。
チェスターコートのモデルもあり、そちらも良かったのだが、
タイトなフィット感には短めの丈がマッチすると感じたので、ジャケットを選んだ。
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ホーンボタンが特徴的。
このフォルメンテーラというジャージー生地、ウールナイロン混紡で分厚く、保温性・防風性・伸縮性が高い。
袖裏や肩パットも邪魔にならない程度についており、シルエットも良く着やすい。
タイトにサクっとフィットするし肌触りも柔らかい。
ということでついつい使い倒してしまう。
冬場にローゲージニットとこのジャケットで外出ということも多々あるが、暖かいし動きやすい。
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ラペルも折り返せるので、ちょっときれい目にも見える。
ビジネスには微妙だが、カットオフじゃないモデルであれば全方位型なのではないか。
これで出勤した時は何も言われなかった。
東京は無関心なので私がいつもより楽なジャケットの中、羽を伸ばしリラックスしていることに誰も気づかない。
ベネチアはどうだろう。