「目病み女と風邪ひき男」という格言をご存知だろうか。
どちらも、「その状態が最も色気がある」とされた昔の格言である。
「目病み女」は確か軽度の病で、瞳がウルウルするからかわいく見える、などと小耳に挟んだことはある。
しかし「風邪ひき男」はとんとわからない。
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考えられ得るところは、
「弱っている男性を目の前にすると女性の母性本能がくすぐられ~」とか、
「何かに寄りかかる仕草自体が男性的な振る舞いからすれば意外であり、ギャップモテが~」とか。
ただ相反する話があって、ある人類学者が提唱する「足長男子寄生虫不在説」である。
「なぜ足長男子がモテるか?」という話から始まるもので、
「足が長い男子は寄生虫がおらず(寄生虫は腸を長くすればするほど栄養を取ることができる為、世代を越え寄生虫が受け継がれる昔においては胴長男子が多かった)、それを本能的に女性は選びとっており、やがて寄生虫生息率が高い胴長男子は淘汰された」というものである。
とすれば、女性は本能的に健康な男子を無意識に選び取るはずである。
免疫力が低い個体が適者生存の荒波をくぐりぬけられるとはミームも思わない。
したがって、そんな環境において女性が風邪ひき男に色気を感じ惹かれるとは到底思えない。
ではなぜ「風邪ひき男は色気がある」とされるのか?
今私は風邪を引いて10日経つ。
今までにこんな長い風邪を経験したことはない。
そしてここへ来て風邪がぶり返すという初体験までした。
率直に「ああ、歳だな」と思った。
以前、チェックシャツばかり着る疫学をやっていた医者から
「風邪は20代の終わり~40代前半が一番引きやすいんだ」と聞いたことがある。
もしかすると、そもそも風邪のひきやすさは色気の発露ととともに到来するのではないだろうか。
色気の発露については私はトムフォードと意見を同にする。
曰く「色気はリラックスしている人からしか出ない」というものである。
ある程度仕事にしろ人生にしろ、一度限界まで戦い、疲れ果て、
余裕が出始める年代、それが20代末だと考えている。
これはブルースでよく言われる色気に似ていて、
「行為を鍛錬し抜いた後、疲れ切った末路に発現する、枯れた美しさ」でもある。
そういえば風邪だって一つの「生命力の枯れ」だ。
それらが相まって、その人の色気が洗練されたように見えるのではないか。
と、小難しいことを書いているのだが、問題は一向に私の色気は理解されない点にある。
これだけの長期間風邪を引いているのだが、箸にも棒にもかからない。
ううむ。
蒲柳のシャツ狂いというニッチャーのIPOに向けての市場戦略が問われている昨今。