前回に引き続き、南シャツへの無茶振りビスポークは続きます。
LABO vol.3 イタリアンスタンドカラー
カルロリーバの織機を買い取ったと言われるイタリアの生地屋、ボンファンティ。野郎。ネイビーっていうから買ってみたら色味違うじゃねえか。パープルじゃん。っていうB反というか、イタリアらしい仕事の生地。
それを無茶にスタンドカラー+イタリアンカラーを提案。スタンドカラーのシャツに憧れていた。濃色シャツってビジュアル系っぽいな…と思っていた所、スタンドカラーで余計にそれっぽく。
でも、それだけではつまらないので。
普通のオープンカラーシャツのイメージまで持っていく。
何言ってるかわからなかったと思うのに、割と良い線で実現していただいた。ビスポークを前面に出すシャツ屋としては流石。
なんか実験的な要素が欲しいなと思い、ボタンホールは手縫いで一か所お願いしてみた。もう上の画像を見ればどちらが手縫いかわかるだろう。たぶん、手縫いで仕上げている時に私への怒りで糸を数回食いちぎっているんでしょうね。
衿型はわりと良い出来なので白で作れば良かった。新興宗教の教祖感出ると思う。
LABO vol.4 ポエルライクミニマリズム
要素を表面から無くすのが好きなので、どこまでいけるのかなとか思っていたが、行き過ぎて異形の者になった。ただ目論見通りではある。
最もこだわったのはフロントボタン。見えなくしたいのだが、従来の比翼の仕様が自分は嫌い(あのビラビラとかなんだよって思う)。そこで白シャツで私がよくやる前身頃二重処理を利用し、裏側だけにボタンホールを設える。当初は留めにくいのではという懸念があったが、スラックスの持ち出し部分でもその仕様のものがあり、釦の縫製が適切であれば問題ないだろうと思っていた。一応、南さんの配慮で芯を入れて対処している。盲点だったのは裏のボタンホールがアイロンで表に響く事。これは如何ともしがたい。あまり気にならないと友人は言っていたが。
さらに、第一釦は無くした。タイドアップ時はネクタイで留まるし、ネクタイをしないスタイルの場合、私が第一釦を留めることはない為だ。
当然、縫い目も表に出さないか見えない位置に集約する。ここが南さんの腕の見せ所で、てっきりモードシャツあるあるの袖袋縫いだけだと思ってたら、いたる所が袋縫い、コンストラクションで仕上がってきた。
これ、自分で頼んでおいてアレなんですけど、「これ仕上げるためには縫い代をこれをこうして…」と数回説明を受けたものの、わかりませんでした。choyaの三回折り伏せ縫いの時はわかったけど、もう南さんが何をやったのかわからない。わからないがすごい。面倒な事言ってすいません。
ヨークも無くす。これは前と同じ。ディオールオムライク。
第二釦。これはキャロルクリスチャンポエルと、土井縫工所と、カルペディエムとかのシャツから着想を得た成れの果て。何かというと、拝み釦にした上で足を長めに取ってある。
普通の釦として留めるとこうなる。
拝みで留めるとこうなる。ただ、これはハンギングしてるからあまり開いていないのだけれど、もう少し襟元が開く。本当に僅かだが。この僅かが良い。あと偶然だけどこの微妙な開き具合のおかげで、襟羽根がなで肩のラインと平行になる。
写真は無いがこの拝みボタンそのものを取り去ることも可能で、片方に空虚なボタンホールが一つだけ残るという、不思議な見た目になる。
ちなみに生地はトマスメイソンのゴールドライン。140双糸。スッベスベで白度も高い。他に適切な表現があるかもしれないけど、私はこのシャツがエヴァンゲリオンの使徒に見えて仕方がない。首元の形もなんかそれっぽい。
ラボシリーズではストライプグルリの時以上の謎ディティール作品になってしまい、作ってる最中に私への怒りでjukiミシンの1台や2台は破壊しているに違いない。
でも割と今作は気に入っている。ONの時は本当にネクタイのおかげで誰も異様さに気付かないのだが、「こっそり異様なもの着てるんだぜ・・・」と思う事で何かを満たしている。日常に紛れ込む変態。
この比翼仕様を使ってノーカラーとか、割と生地によってはカッコいいのが出来るのでは・・・と思っている。
まだまだビスポークシャツの研究は続く。
bengal
amicoさま
信頼関係というか、やってるうちにお互いにノリでそうなっちゃったんですよね。まあ確かに普通のシャツ屋は受けないと思いますが。長い付き合いなので仕方ないのかもしれません。
秋冬は服好きの楽しい季節ですよね。いいオーダーが出来る事を祈っております。
amico
返信有難うございます。
フライフロント、確かに、ではないですね。何と表現すれば良いのか難しい仕様ですね。僕はここまでの信頼関係を築けているシャツ屋は無いので、羨ましい限りです。
とはいえ、拝見をしていると懇意にしている店で対応できないはずのないディテールや縫製の仕様など参考にしつつ、色々実験をしていこうと思っている次第です。
そろそろ、秋冬のものを考えるので記事を拝読するにつけ楽しみは広がるばかりです。
bengal
amico様
こんにちは。拝み合わせは、ある一角の系統のブランド群では流行した時期がありました。大したアイデアではないので、どうぞご自由に。
ちなみにこの仕様はフライフロントではありません。
amico
色々勉強になります。
フライフロント、第一ボタン無しの仕様は自分でも作ったことがありますが、拝み合わせまでは、発想がありませんでした。
拝み合わせ仕様のアイディア、頂いてもよろしいですか?
bengal
integural様
こちらこそ、このようなブログを見ていただき、ありがとうございます。
あらゆるところでオーダーシャツを作ってきましたが、南さんのフィッターとしての能力はかなり高くていらっしゃいますので、
ビスポークの良さを存分に体感できるかと思います。
2回目、3回目での調整がまた楽しみでもありますので、どんどん挑戦してみてください。
integural
いつも楽しく拝見させていただいてます。
こちらのブログで南シャツを知り、先日初めてビスポークシャツをオーダーしました。
事前の採算や身体の癖などかなり細かく見ていただいたので、まさにこれがビスポークなのかと身をもって経験できました。
シャツの魅力をご教授下さり、本当に感謝しています。
今後も更新を楽しみにしております。