スラックス。切れ味のある一本。

洋服は自動車に似ている。どちらも足回りが大切だから。

服部晋

ANSNAMの中野さん某パリのモデリストの共作ブランド、フェンダール。始動したのは2019年の12月。翌年3月、COVID-19が騒がれ出した頃に世に出た。現在はワンタックのモデルが新しくリリースされている。

これは1stのノータックのもの。1stはチノとスラックスの2モデルで、生地を選んでパターンオーダーと言った具合だった。チノはテーパードというかシャープなラインを描き、スラックスは膝下からストンとしたシルエット。

 

ブラウンのウール。斜めに走る地の目が目立つ。ブラウンでこれだと、さも”おじいちゃんのズボン”といった感じで良いなと思っていた所、中野氏がドンズバで「おじいちゃんのズボンみたいですよね」と脳内を読み取ったかのように言ってくる。流石としか言いようが無い。

 

フロントポケットの袋布は生成綿で気持ちいい。地味にインナーポケットもある。
スラックスのフロントホックとしては珍しい。

細部のどうこうはあるんだけど、何よりもラインがいい。とある人が「リヴゴーシュの・・・」と表していたが、股上の浅さや腰回りのすっきり具合からの適度なフレア(に見える)流れがまさにそれ。ただ、個人的には2007AWだったかにユニクロがタスマニアウールを初めて使って販売したスラックスを思い出した。人生で初めて履き潰したスラックスだ。あのスラックスと同じく、寸法的には裾20.5cmに比べて膝が+1cmと、セミフレアとまでは言えない、ストンとしたシルエットをワンブレイクで履く提案。

中野氏は映画「ジョーカー」のアーサーが履いていたパンツと表していたが、なるほどわからんでもない。雰囲気だけ。雰囲気だけで言うと、セミフレアと聞いていた私は履くまでファーラーのホップサックみたいなもんかなと思っていた。

アジャスターの金具も珍しいもの。個人的にはチノのアジャスターベルトの付き方が好きだったんだけど、これもこれで好みだ。

ストンとしたパンツを、腰でギュッと絞って、何も気にせず履く。今どきのテーパードしたパンツと違い、裾がある程度開放されているので気持ちよくもある。

割とジャケットにもTシャツにもなんにでも合う。それに履いていて特に主張する事もなく、日常的に着られる。味噌汁だ。澄んだ出汁のスープ。そういえばFendartはフランス語で、スープ、という意味だったかな、と思ったけどズボン、だった。

ここまで普通に良いズボン、それがなかなか無い。