イタリア、マッシモ・ピオンボのシャツ。

とあるセレクトショップで、「変わった感じでいいシャツありませんか?」って言ったら「こちらなんかどうでしょう」と来たので「じゃ買ってみますね」と即買、「えっ…マジすか」。その後また店に行ったらその店員が「適当にモノを勧めてスンマセン」という謎の謝罪を受けたというシャツ。別にモノは悪くないと思うけど。なんで謝ったんだ。

濃色のシャツを着る時は無難に淡色のジャケットに合わせたりする。だけどピオンボの提案の場合、ドレス系紳士服ではあまりなかった「同トーンの異色相」とかを使うため、濃色のシャツに補色のジャケットも容赦なくぶち込んでくる。肌の再度が高い人の方が似合うのでは、とはじめ思ったが、そうでもない。それなりの人生を経ていないとヨウジヤマモトのウールギャバが履いてもいまいち似合わないのと似たような、着る人を選ぶブランドではあるが、このブランドは少し違う意味でのリアルクローズだ。

割と高いシャツなので、求められるレベルのつくりの良さはある。

マッシモ・ピオンボが日本で販売された時、コピーに踊ったブランドの名称がある。Kitonである。Kitonの生産ラインを使って製造しているハンドメイドのブランドですよ、という触れ込みだ。2012年、MP di Massimo Piomboになる前のPIOMBOというブランド名だった頃より価格は上がった。正直、PIOMBO時代の服をたくさん見たわけでは無いので詳しくは知らないのだが、ややエキセントリックな色使い・スタイルは昔からだったらしい。生地のセレクトが少し過激(高級?)になったとは聞いている。

ピオンボはとにかく過激な色柄を使うため、日本では保守的なアイテムが先にでてしまい、過激なものがセールに残る。トゥモローランドのアウトレットへ行くと大体デカいチェックとか目がチカチカするような色のアウターが残っていた。 マサワコットンの無地のアイテムもあるにはある(あのコットンはやっぱり被服用ではないらしい、服好きはそういうことするよね、わかる)が、デザイナーとしてはやはり柄物を主軸と考えたいらしい。

このブランドを一言でいえば、デザイナーが全世界を旅行しエキゾチックな素材を見つけ、 旧式の服装とモダンなスタイルを混ぜたテイストに落とし込み、それをサルトリオの生産ラインに乗せて作る服(今はもうサルトリオのラインに乗ってないのではないか)。

フォレストグリーン。

ちなみにデザイナー本人はだいたいブルー系のシャツに濃色のクルーネックニット、濃色のパンツにデザートブーツ、クラシックなジャケットというごく普通のいでたちである。ジェノヴァで生まれて建築と文学に傾倒し、ジェノヴァ大学で政治を学び、イギリスからの生地輸入を手掛けていた祖父から影響を受けて生地ベースの服作りをはじめたらしい。自分で着たい、というよりか各国の旅に重きを置いてるようだし、見つけた生地ベースでスケッチするようなデザイナーなんだろうか。

「贅沢とは知性だ」と言うピオンボの服を見るたびに、私は絵葉書を思い浮かべる。旅先で見つけた鮮やかな印象の絵葉書を手に取った一瞬。マッシモ・ピオンボを纏った姿を目にすると、街中で異なる時代の異なる文化の風を感じられる。モードブランドのように異形であったり、イタリアのコンサバな服のように「あ、クラシコイタリアね」という決まり切った印象ではない。あくまでも「世界のどこかの文化が生み出した服ではないだろうか」という印象、ここではないどこかの文化との少しのつながりを見出せる。

これはデザイナー本人が旅で実際に見つけてきた生地を使っているからだろう。0から生み出す方法とは違うそのアプローチは、古い民謡のレコードを見つけカットアップして用いるスタイルだ。確かに心に響くものがある。