元ナノユニバースのプレスの柿本さんが作った人気店、BLOOM&BRANCHのプライベートブランド、Phlannelのシャツ、”Anonymous shirt”。

柿本さん自身は長身のサーフィン好きの文豪っぽい見た目。骨董通りの店には民藝品、コーヒー、靴関連の品と、欧米のライフスタイル志向のセレクトショップさながらの印象で、ナノユニバースの印象とは少し異なる。当初、発起人はどこかのセレショのプレスと聞いていたので、まさかナノユニバースだとは思わなかった。いや、あまりナノユニバースを知らない状態で書いている。個人的なナノユニバースの印象と言えば、ナノユニバース・グラウンドフロアーを友人のギャル男が着倒しており、そのギャル男は広告大手に就職し今はプール付きの物件に住んで外車を乗り回しているため、なんかそういうあまり好もしくないイメージが付いている。坊主が憎いわけでも袈裟が憎いわけでもないが、認知的協和ってる。


シャツの生地は粗め60番手だが、ワッシャー加工されていてシワが細かく入っている。触った感じ、ドレスにもカジュアルにもあまりない、くりくりとした心地。作り自体もドレスとカジュアルの間を突いているので、そういう意味ではオブスキュアな立ち位置のシャツだ。


丈が長めで身幅がある一方、ポケットは無く、また襟は小襟で運針は細かくドレス寄りの表情。コモリシャツの印象とはちょっと違う。デザイナーは浅川さんという女性だろうか。立ち上げ当初は元マーガレットハウエルの人とか、あるいはサンカッケーの人とかだったらしい。今はSCYE BASICみたいに定番ラインのSOLとシーズンラインを分けて管理している様子。


ロッカーループは長め。ワッシャー加工なのでサッと着られるし、雑にハンギングしても見た目にも良いので、狙って長めのものにしてるんだろう。当然古着のディティール参照もあるだろうけど。
それにしてもアノニマスシャツという名前の割には、胸ポケットの上部に謎の同色ステッチが入っていたりするのは何の意図があるのだろう、捨てきれなかった自意識なのだろうかと考えていた。

しばらく考えていて、何の事は無い、このシャツは「民芸品」なのだと思った。ガチガチの柳宗悦の提唱したものに基づくというより、リアルな民芸品のサンプリング。
どこか地方の土産物屋に行った際に、無銘で簡素な見た目の廉価なお椀や皿を見たことがあると思う。そういったものはインダストリアルな風味はあまりない。なぜシンプルなのに無いのか…と思ってよく見ると、作った人の残り香というか、「ぶれ」みたいなものが残されている。それは手作業に限る事ではなく、何らか作った人の癖みたいなもの、それが表れている。
たぶん、その僅かに見える不思議な癖、そういうものを表現しようとしてステッチを入れたのではないか。と思っているのだが、どうでしょうか柿本さん。鎌倉に行って聞いてこようかな。
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