ストック4.マイケルタピアのカットソー

 
チェスターバリーで作らせたパンツのコレクションからはじまったマイケルタピア。
アメリカントラディショナルでありながら、野暮ったく土臭い雰囲気が抑えられ品がある。「リアルクローズ」といった紹介をされることが多いように思う(余談だが「リアルクローズ」は、エディのサンローランをも含むような「漢の服」という意味で使う人々や、ノームコアという言葉と合わせて燃え上がる人々など、面倒くさい単語なので容易に使うのは避けた方がよいと思うのだがいかに)。
 
 
Tシャツ。
細かい気泡を含むスポンジケーキのようにふんわりと肌に乗り、べとつかずさらっとしている。HanesのBeefy-Tシャツという極厚の生地のTシャツがあるが、あのような肉厚感がありながらスリムにフィットする。
 
そのサクッとフィットする感覚の虜になり、黒・白・オリーブカーキと買ったうえ、黒は多数を着回し、ミニマリストとして着倒していた
よくバーニーズやディストリクトをウロつき、ファミリーセールでは薄いビニールに包まれたそれを奥底から引きずりだし70%OFFになったそれに3,000円を嬉々として払っていた。
 
私の場合はアメカジを通らなかった。故にTシャツの王道は体験していない。縮みが激しいサンスペル、某ブランドのファクトリーと噂されたピジャマ・クロージング、どっちもダメだなと思った次はキツめのフィットのルトロワ、ラグい素材のフィレチュール・ド・リオンと辿り、お高いドイツの老舗シーサーへ。最後はこのカットソーに落ち着いたのだった。
 
良い体験だった。細いアームホールで少しだけ長めの袖は脇下までサクリとフィットし、海外インナーブランドにありがちな着丈の長さもなく、リブのフィットも強すぎず弱すぎない。着て素直に気持ち良いな、と思った。
ただ、首元はつまりがちで、フィットが良すぎるのでインナー感がぬぐえず、そのため一枚で着ると身体のラインが出るため瘦せていると貧相に見えるのが痛い。身体に喧嘩を売ってくるタイプだ。
 
 
丸胴編みになっており、袖は二重ではない。
リブの部分は普通よりやや長いが、あまり目立たない。
 
当初、脇下のフィット感があるTシャツはアルマーニのオリジナルラインしか知らなかった。肩回りに吸い付き、だからと言って妙な化繊混紡でなく(吸湿性がガタ落ちするので私はポリウレタンは毛嫌いしている)とても着心地が良い。
サクサクッとして、キュッと着られるのだ。焼きたてのパンをサクリとかじる時の軽快な気持ちよさがある。こういう感触はsmoothdayには無い。smoothdayのようなテロテロ系のカットソーではないがっしり系のカットソーは、これとschiesserとフィラチュール・ド・リオンが今の所クローゼットの常連となっている。
 
 
このTシャツ、タピアロサンジェルスとなった今では私は見たことがない。なぜだろう。誰か似たようなTシャツを教えて欲しい。このTシャツのファクトリーでも良い。
そういうわけで、2年前に最後の一着となったこの末裔のTシャツは、もうそろそろ寿命が近いものの、栄誉ある襤褸としてまだ働いている。