メッシュベルトと言うのは難しい。

ベルトは苦しいという話をした。機能としては「縛る」ものだから当然そうだろう。しかし、ベルトはれっきとした装身具でもある。

その位置付けが強いベルトがこれ。紐、と言っても過言でもない革の集合。これは馬の革を裂いて編んだもので、いわゆるクラフト系。繊細にも見えるし、力強くも見える。相反する要素が同居する雰囲気。

作家、早川さんが作るベルト。

紐でしばられているパッケージ
単体で触ると本当にただの革紐の軽さ
「たまにお休みさせる」くらいで良いんだな、というのが面白かった。週休2日くらいでいいって事だろうけど、うちは週休6日どころではない

棒針で編んでいるらしい。いかにも作家性が極まった手作りベルトだ。棒針で繊細な革ひもをしとしとと編んだ結果が、古代ギリシャの武具携帯に起源を持つ荒々しいベルトとなると、そんな力を込めて縛っていいもんだろうか、三矢の訓と同じく数を揃えれば裂けないぜ、ということなのだろうか、と様々に心配してしまう。そんな半信半疑で使い始めたので、ベルトとのかかわり方としては新鮮な漕ぎ出しだった。

丁寧に編まれており、柔らかい触り心地。かぎ針編みで作られたローゲージニットのイメージに近い
クセが強い紐ではなく柔らかめなので、素直に垂れる。デニムは割と合わせるタイプを選ぶ

ベルトというとメッシュも含め、ある程度の硬さがあるイメージ。だが、これは見事にない。しかも剣先も丸みがあり、幅も細いため、遠目に見ても一般的なメッシュベルトと違う雰囲気が漂っている。目が細かいために、粗めのデニムとかはあまり合っている印象がない。

バックルは近くでよく見ればわかる程度の控えめな錆加工がされている。riccardo forconiが以前こういったベルトを出していたが、全然人気が無かった記憶がある。ただ荒々しいそれとは別に、このベルトはあくまでもクリーンな雰囲気。Araki yuuとかNestrobe系の服が合いそうだなと思い、ビンテージ生地のシャツベッドリネンシャツを合わせてみたが抜群の相性だった。ピンが短く可動域が独特のため、慣れるまでは少し着脱に手間取るがそこは丁寧な暮らしの一環と考えて済ます。

実はこのバックル、あまり好きではない。けれど、このベルトにハマるバックルをさんざん考えたがこれ以外の最適解が思いつかなかった。tagliovivoみたいになるとただのアルチザン系になってしまう。中性的なバランスを保った形で仕上げるにはこうなる。この選定は大変だったのではと思う
このカバー部分、妙にかわいさがある

総じて面白いベルトだが、私がこのベルトの素晴らしいと思う点は、「落ち感」である。これは写真では伝わらない。手で横に摘まんで持った時、剣先がスッと垂れるのである。ハリが無い、という表現よりも、しなやか、が近い。しなやかで強い。例えるなら鎖かたびらみたい。J&M DAVIDSONのベルト剣先のプンターレのように、剣先に重みを出して落ち感を意図的に作るベルトがあるが、これはそんな細工無しに落ちる。しかもするりと解像度が高い落ち方である。

細い革紐と隙間がこの落ち方を実現しているのだろうか

こんな落ち方をするベルト、そうそう無いのでは。メッシュベルトは編み込んで作る過程で目が詰まるので、そうなるとハリが生まれるはず。これは素材の選定と棒針編みの複合技でこうなるのか、工程に非常に興味がある。いずれにせよ今の所、womb leatherのベルトは唯一無二性が高い。鞄も作られていたので、いつか試みに服を作る事もあるのだろうか。