COMME des GARCONS SHIRT FOREVER コムデギャルソンシャツフォーエバーのシャツ

「いいかい学生さん、ギャルソンシャツをな、ギャルソンシャツをいつでも買えるくらいになりなよ。 それが、人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、 ちょうどいいくらいってとこなんだ」

そんなわけないだろ高いよ。

シャツの定番は何か。ターンブル&アッサーシャルベフライボレッリマーガレットハウエル鎌倉シャツ?どれも定番になりうるシャツについて書いてきた。一つを除いて。

コムデギャルソンシャツの定番ライン、”フォーエバー”のシャツだ。

ブロード、限りなく透明に近いブルー

1988年にスタートした、シャツだけのコレクションだったギャルソンのライン、COMME des GARCONS SHIRT。当時はフランスで作った方が日本製を関税乗せて売るより欧州で売りやすかった、みたいな話を聞いたことがあるけどガセだと思う。

2008年にはForeverラインが出来る。COMME des GARCONS SHIRTはシャツから始まったが、パンツやカットソーにジャケットなど、あらゆるアイテムを展開するようになり(しかもそれが好評だったりしたので)、今一度大本の「定番のシャツ」を強調したかったのではなかろうか。

このシャツの醍醐味は「生地」、「襟」である。

これはナロークラシック

型はワイドクラシック、ナロークラシック、スモールボタンダウン、ベリーナロー(僅少)の4種。違いはシルエット。

ワイドクラシック>ナロークラシック>ベリーナロー>スモールボタンダウンと細くなる。ナロークラシックが最も流通が多く、型数も多いと予測するが、ボタンダウンの細さは驚き。またベリーナローはほぼ市場に生息しない。シーズン初めにギャルソンの店員に買い付けを依頼するのが良い。

なお、サイズL以降になるとフロントが7釦になる。余談だがギャルソンシャツのシャツのXLの表記は「X」となっている。理由はわからない。

レギュラーが6mm、ボタンダウンが5.5mmのいずれも小襟

襟は端から2mm幅の所を7~8ステッチの運針でとても端正に縫い上げる。カフも、身頃も、袖も、前立ても全て2~3mmの縫製幅。リズムが整っており禁欲的な静けさを感じるが、これが本当に素晴らしく綺麗。幅が太いのは7~8mmの袖付け部分くらい。それは必要に応じての太さだが。

カフから肩に向かって縫製線が2本伸びているのがわかるだろうか

3枚袖。袖先に向かって細くするため、ジャケットなど厚手の生地のパターンで2枚剥ぎは意味があるが、シャツのような軽量衣類でやるのであれば、デザイン的なものと見ていいだろう。ソースのシャツがビンテージでそういうディティールだったとかの理由が多いが、いかに。サンリミット同様にプレーンな線だ。

ちなみに冒頭で海外向けである事に疑問を呈したが、何よりこのシャツ、袖が短い。既製品の国内向け商品と同じかそれ以下である。短めに着る提案なんだろうか、と思ったがそんなスタイルルックをギャルソンで見たことが無いので、恐らくこのギャルソンシャツの主要売上は日本又はアジア圏だろう。もし欧州向けなら袖が長いはずだ。それとも実は現地販売用と2ライン用意されていたりするんだろうか。この辺りの情報が欲しい。

カフは6mmと短め。ちなみにドレスシャツと同じく片面接着芯。

釦は直径11mm、厚さ2mm弱のタライ。薄めの生地であればサンリミットと違い、全て根巻されているのは流石。良いシャツ、と胸を張って言える。※一部厚手の生地、特殊な刺し子生地などは根巻されていないのを確認している

サイドプリーツ。

ギャルソンシャツを選ぶ人は大抵ワイドクラシックとナロークラシックだが、背中のプリーツを見れば一発で判別できる。ボックスプリーツがワイドで、サイドプリーツがナロー。ボックスプリーツなのに細い!と思ったなら、それはベリーナローより細いボタンダウンだ。異常に細い。

さて、一つの特徴、生地だが、これは実際に触って欲しい。シャツは一に生地、二に生地なのだが申し分ない。生地メーカータグが無いがいずれもALUMOの高番手以上に相当する、欧州のシャツ生地の中でも相当に良いものを使っている。光沢や発色の良さなど含め、デザイナーもののシャツではあまり出てこないレベルで、ビスポークで使われるレベルだと思われる。

これはオックスフォード。ご覧の通り、ロイヤルオックスなどのレベルと比較にならないほど異常に肌理が細かい。

もう一つの特徴、襟。

襟もカフ同様に片面接着芯。柔らかめ。タイスペースはない。
第一釦を外すと襟羽根が適度に浮く

FOREVERの名に恥じない、完成された襟型。小襟ではあるがそれほどでもない小ささ、レギュラーカラーとも言えない短さ。閉めれば”W”の字のごとく、空ければふわりと小襟。いずれも美しく、ステッチと相まって非常に洗練されている。

どちらかと言うとアイロンをかけて着たいカジュアルシャツなんだけど、一応仮接着されているのもあって洗い晒しで着てもある程度サマになる。

これで4万とかする。平気でイタリアの高級シャツを凌駕し、ターンブルアッサーも超え、ビスポークシャツが割と良い生地で仕立てられるレベル。でもこれ本当に病みつきになるレベルで名作なので、10枚持ってますとか30枚持ってますという人がいるのも理解できる。

気付いたらこうなる

いくつか着て長い期間過ごした中で思った事としては、

・チャコールグレーは意外に汎用性が高く、イマドキに見える。白Tに羽織るだけでOMOTESANDO COFFE系列の店員みたいになる

・ストライプはガチで既製シャツの中ではトップクラスの生地の良さで、カジュアルに着ても品質がにじみ出る。ただ、単色より一回り高い。またシンプルなロンドンストライプが(過去はあったが)もうない

・カジュアル限定なら今ならワイドクラシックが良い。ていうかいい生地なんだから生地面積多い方がいいよね

・洗ってるうちに縮む

・ギャルソンシャツ”ガールズ”とか”ボーイズ”はスリムなラインでもうやってない(はず)

スモールボタンダウン。見てわかる通り細く、着丈も短い
ワイドクラシック。ギャルソンシャツの中では今いちばん旬
ストライプ、ボーダーに加え、斜めストライプも作っている
“総柄は実質無地”説はわからんでもない

「休日のカジュアルシャツで最高の一枚」を紹介するとなったら上がってくる候補に必ずいるはず、そういう傑作だと思う。買って損をしない永世の銘品である。

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15件のコメント

  1. bengalさま

    ご寛容なお心遣いをまことにありがとうございます!
    ご返信いただいた後すぐに、当該URL載せて返信させていただいたのですが、
    やはりコメントへのURLはスパムか何かで弾かれてしまうのかもしれず、
    こちらの投稿の自分の名前の(April)のところにリンクで当該動画を貼り付けさせていただきました!

    まだ数はしれているのですが、
    おかげさまで割とご好評いただだいておりまして、
    宜しければぜひご覧いただけますと嬉しいです!
    お忙しいところを取り急ぎのお礼のみにて恐縮ですが、
    引き続き何卒よろしくお願いいたします。

  2. Aprilさま
    こんにちは。拙い記事をお読みいただきありがとうございます。
    ストライプ、生地が良いですよね。ギャルソンシャツフォーエバーの生地のブランドは諸説ありますが、良いものには違いないと思います。
    さて、動画は出来ましたら拝見いたしますね。直リンクなども特に気にしませんのでご自由に編集ください。良いものが出来ることを祈っております。

  3. bengalさま

    素敵な記事をありがとうございます!
    実はずっと前にコムデギャルソン・シャツを知った時に、
    色々とリサーチする中でこのページも拝見していまして、
    ずっと頭の片隅に存在がありました。

    ちょうど先日の値上がり前に今がそのタイミングだと駆け込みで購入しましたところ、これがおっしゃる通り素晴らしく、、
    一枚目はウールのワイドクラシックだったのですが、
    どうしても「ガチ」と見覚えのあったストライプも欲しくなって、海外通販で購入し、これまた最高でした。(これはナロークラシックで、どちらも最高だったのですが、個人的にはこちらのストライプの生地感が最高に好きでした。)

    また宣伝にはなってしまうのですが、
    今週の8/30(金)20時〜自分の運営しております「Fashion Museum by Pickaxx」というYouTubeチャンネルで、
    bengalさんのこのページを多分に参考にさせていただきましたコムデギャルソン・シャツの動画をアップさせていただきますので、
    もし宜しければご覧いただけますと幸いです、!
    (直リンクは迷惑かと思いますので、コメントのサイトにURLを貼らせていただきます)
    取り急ぎのお礼のみとなってしまい大変恐縮ですが、
    どうぞよろしくお願いいたします!

    April

  4. SGさま
    こんにちは。持っていないのでわかりませんが、ウールのシャツは普通のシャツと同じコースで洗濯しています。洗い方や洗剤によると思いますが私はあまり気にしません。ただ洗い晒しの表情が綿とまったく違うので、そこは注意点ですね。

  5. こんにちは。洗い晒しで着る事にとても魅力を感じるのですが、ファインウールの物も洗濯できそうな雰囲気ですか?ご存じであればご回答ください。

  6. たけのこさま
    こんにちは。お読みいただきありがとうございます。
    ウールは最近出た中では良い作だと思います。かなり高いですよね。私も羽織りましたが、素材はかなり良いですね。個人的には某デザイナーの大きめのウールシャツが手元にあったため買うには至りませんでしたが。冬はとても良いと思います。

  7. たけのこ

    bengal様
    いつも楽しく拝見させていただいております。
    本ブログに影響されて先日初めてギャルソンシャツのフォーエバーを試させていただきました。
    本文にも記載のあった通り、なかなか気合の必要な価格でした。
    ただ、ストライプと同価格でウール素材のシャツが展開されており、これがまた非常に素晴らしく、コットンでなくウールでフォーエバーデビューに至りました。
    スタッフさん曰く、ここ最近ウール素材でも展開をはじめたそうですので、bengal様ももし機会があればぜひ羽織ってみてください。ワイドクラシックを大きめのサイズ感で羽織るのが最高に気持ちいいです笑
    長文、乱文失礼致しました。

  8. うださま
    こんにちは。いつもありがとうございます。
    結論から言うと、一生は厳しいと思います。ハウエルのシャツが何のモデルを指しているかにもよりますが、襟芯も柔らかく、襟ぐりも広く下がりがあり、カジュアル想定です。
    大してギャルソンは襟芯もあり、ドレスもいけなくはない仕様です。片面接着でもあるので使用していくと擦り切れることなど想定されます。襟やカフスの擦り切れをアジとして承服できるかどうか、と言う点は私は否と考えるので(襟袖を交換すればいい気はしますが)うださまのおっしゃる理想で言うとまだマーガレットハウエルかな、というのが現状の想定です。
    ただ、シーズン1回洗いとのことで、着用毎に洗わない、という運用のようにも聞こえるので、そのレベルの着方をした事がない私の意見であることをお含み置きください。

  9. お世話になります。いつも楽しく拝見しております。
    手縫い等にはあまり興味がなく、マーガレットハウエルのシャツが好きで、マーガレットハウエル のシャツを基準にコストや品質を比べ他のブランドを買うか否かをいつも考えております。
    そんな中、取り上げていただいたコムデギャルソンのフォーエバーのシャツはずっと気になっており買おうと手に取り「でも、このシャツ一枚でハウエルが2枚買える、、」と棚に戻すことを何度も繰り返しております。。
    たくさんフォーエバーを着ていらっしゃるかと思いますが、洗ってエイジングされていっても味わいあるシャツでしょうか?ハウエルのシャツはエイジングされても良い雰囲気なのが気に入っており、、
    フォーエバーなら、お値段もしますし、クビにバンダナを巻いて汚れを抑え、シーズンに1回洗う程度の頻度で着て、できれば一生着たいと思ってしまいます(貧乏性なので)が、
    そのような着方をするようなシャツではないでしょうか?

    長文失礼しました。ご意見お聞かせいただけたら幸いです。

  10. ヴェロコ様
    はじめまして。良いですよね。ストライプは本当に良い生地ですし名品だと思います。私はDSMで買う事が多かったのですが、ストライプはあまり無く、柄物で言えば直営がいいと思います。青山の他、コロナ前ですが昔の記憶ではGYREのギャルソンに豊富にあった気がしますね。ストライプばかり買い付けるセレクトも大阪にはありましたが、確かに東京ですと難しいですね。あまりお力になれずすいません。

  11. ヴェロコ

    はじめまして。私もブルーストライプのものを2枚持っていますが、本当にいいものだと思っています。買い増しを検討しているのですが、都内で型数を多く取り扱っているのは、やはり青山の本店でしょうか。以前ドーバーに見に行った時あまり置いてなく、伊勢丹のギャルソンで購入しました。年2回の入荷で、確か9月に入荷すると店員さんが言っていた気がするので、もしお分かりであれば教えていただきたいです。

  12. ミスモグ様
    こんにちは。記号的な差異はなく質としての差異があります。後者をおっしゃっているのであれば書いている通りで、触ればわかると思います。

  13. ミスモグ

    こんにちは、ユニクロ等との違いがわからないのですがどのような違いがあるのでしょうか??

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