
今の東京の真夏に何とか着られるジャケット。普通に暑いけど、着ることはできる。シャリックとか化繊の強撚シアサッカーとかじゃなくて、これ。
「いやいや暑いでしょ、絶対軽い生地の方が涼しいじゃん」、そうおっしゃいますでしょう、300g越えってまあまあ重いけどそうでもないんよ、という話が今日のメイン。

日本の夏は麻の着物によって過ごされてきた。これはある程度重い。要素は、「コシがあり」、「肌離れする」生地。
ごく薄い、軽量な生地は、湿気を含むと肌に吸着し、肌からの汗の蒸発を妨げる。これと比して、生地重・コシがあり、生地構造が疎で速乾性があれば、肌離れは良いはず。

何度か言及しているが、大見返しについても選好した結果だ。ダブルフェイスにすることで保温性・自重が高まる一方、肌に触れる面の肌離れが良くなることで、トータルとしては不快感が減じられるはず。
体感温度は確か湿度10%ごとに+1℃プラスされるため、欧州と比べて日本は4~5℃実感として温度が高い。生地重が増すことによる保温効果の増程度と、肌離れが良くなることで得られる不快指数の減。私は日本の夏を不快にしている正体を温度ではなく湿度だと考えている。突き詰めるべきは「肌離れの良い素材」のはず。
というわけで、そういう観点だと当然ウィリアム・ハルステッドとかマーチンソンだとかアルフレッド・ブラウンだとかのフレスコが選ばれる。のだが、私はシワ復元力(というかコシ)と色出しでハーディミニスのフレスコが気に入っているわけだ。もちろんリネンという選択肢もあるが、あれはシワを活かすもの。白化も含め、カジュアルに寄る。それでよいならよい。


生地の話が長かったが、岩元さんの縫いにも触れる必要がある。いや縫いはもう文句ないので何も言わないのだが、やはり背広屋という所か、バシッと決まったジャケットのフィッティングを提案されるのが岩元さんだ。
しかしそこに忍び寄る黒い影。そう、南さんである。東京受注会の仮縫いや中縫いの場では、当然家主の南さんが滞在しており、まあ私が普段から南シャツで作ってるノリもあって、サーファー的なレイドバックした観点から玄人めいたアドバイスが加わる。各々が通過してきた守破離が、軽妙な語り口で交わされ、最終的には複眼的な修正に収斂する。とかかっこいい事を書いているが最後はつまんだのかつまんでないのかわからないぐらいのフィニッシュに落ち着く。

というわけでこのジャケットもある程度フィットに余裕を持たせて作った。わかるかわからないかの差。これくらいがビスポークで目指す所なのだろうか。

個人的に悔いている部分は芯はもう少し強くして良かったかな~という程度。予想に反して痩せてしまったので。
ちなみにここまで書いておいてなんですが、そもそも日本では炎天下の屋外でジャケットは普通に着られません。着なければいけないという状況下において、最も涼しいのはこういったもの、という話。そもそも真夏にジャケットを着ている人は、それだけで相当な狂人に見られていることを強く認識し、服は他者のための装いでもあることを思い出してください。気を付けて生きていきます。
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