150番手リネンのシャツ

あなたがたの見てらっしゃる世界は、本当にあんなに美しいのですか?

アンドレ・ジッド “田園交響楽”
オートミールカラーのリネンシャツって人を選ぶんだよな

リネンが高騰している。私も入手するはずだったリネンが突然異常な高値になり、断念した。不作と中国の紡績がうらめしい。

ホワイトリネン、アイリッシュリネンなど、世の中にはリネンの曖昧な単語が豊富にある。ホワイトリネン、それは白いリネンではない。正しくは高番手の貴族用のビンテージリネンを指しており、おいそれと手に入るようなものではない。アイリッシュリネンは一時期のアイルランドの一部のメーカーが製造していた高番手ビンテージリネンで、黄金色のように見える繊細な艶が特徴である。それらは今の基準だと100番手を越すほどだそうだ。

織るのに凄く時間がかかるらしい

これは何かというと、滋賀のとある織元の150番手リネンである。普通、シャツのリネンというのは60番手でまあ細いな、位のもの。ベルギーリネンのメーカーは実際、極細番手として80番手の生地を販売している。そんなもんだから、これは異常値。歴とした世界最高の細さだそうだ。某ブランドが某百貨店の企画で150番手双糸リネンでシャツを作って10万以上で販売していたが、それを見て「まあ単糸でやらんよな…」と思った。

ワンピースカラーとバンドカラ―とプルオーバーの融合
シャルベよね
第一ボタンなどない

そんな希少なリネンを南さんにわたしてヨロシクする。プルオーバー、しかも襟型はだらしなめに。裾はプルオーバーなのでスクエアにしよう、あ、シャルベっとく?シャルベっとこう、やろうやろう。という感じ。

ティッシュ・・・?
スッケスケ
ボタンがあるとティッシュ感が薄れるのでボタン大事

結果は良い感じに仕上がった。いや本当に襟型含めて形が良い。

それにしても、生地が薄く繊細。重さとかそういう問題ではない。「天女にSSがあったらそれはリネンだと思う」と以前述べた。そのリネンがこれである。空気のように軽いのだ。実用に本当に耐えうるのだろうか?と思っていたが、一応使えた。でもまだ一回しか洗ってないし、この先普通に洗濯機で回していって良いのか不安。たぶんこの生地は今までの洋服とは異なる崩壊の仕方をすると思う。なんでそんなもんでシャツを作ってるんだよ、と言わないでほしい。もはや自分でもよくわからなくなっているのだ。昔の高位司祭の麻の服(アイリッシュリネン)を探そうとebayを駆けずり回らんと検索するこの私の指を止めて欲しい。

ちなみに同じ滋賀の別のメーカーで生産されている、リネン100番手平織の生地で作ったシャツはこれ。

これでも良い感じである。こっちは9ボタンで、アルチザン風に様々な留め方が出来るようにして拝み仕様も入れた。そうするとこの色合いもあってアーミッシュ、といったイメージに近づく。袖はカフを短めにして捲れるようにしたのだが、やはりアルザス感が溢れる。これもまた南さんにお願いして作ってもらったんだけど、さすがの出来。

高番手由来の艶
これもスッケスケ

100番手でも激細番手なのがリネンなので、肌触りはやはり繊細。リネンは接触冷感がよく言われるが、水分を吸い上げて蒸散する機能が強い。ただこの番手になってくると水分を吸い上げるとかそういう問題ではなく、何も着ていないようなレベルである。ちゃんとしたリネンシャツを着ているのに半裸中年男性になれる。

高番手リネンの世界を知り、理由もわからずそれを探しながら、果たしてこの探求は自分にとって良い事なのかどうか悩ましく思う。知り続ける事は自分に幸福をもたらしているかというと、わからない。今までも知り得た先に何か良い事があったかと言えば、そんな事はなかった。だから今回もそう。しかし、私は盲目でよしとする事を選ぶことはできないし、おそらくこれからもずっとそうなのだと思う。

もし未読なら、こんなくだらないブログの隅っこ読んでないで、ジッドの田園交響楽を読んだ方が100倍たのしいです

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1件のコメント

  1. Old sport

    コメント失礼いたします、林さんの生地でしょうか、、、

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