畳をジャケットに縫って着る。スーパーヘヴィーリネンキャンバスジャケットである。

極厚の麻、それも鞄や家具に使うための麻を見つけて買った。それを大阪の福井プレスへ送りつける。「厚いと筋ムラが残りますけどいいんすか」ムラ上等のアルチザン育ち、二言目にはYES。

以前、友人が家具用の目付1000gの麻でジャケットを某店で作っており、悪くなかったので生地を探した。しかしそういったリネンはいずれも生成り・明るめのトーンが多い。明るめのリネンジャケットは要らないし、むしろ白化とかして欲しいと思ったので染めてみるかと画策。福井プレスさん快諾。

染めてみてびっくり、往年の老害アルチザン生地じゃん。しかも奥ゆかしく哲学的にフェチを語ろうとする衆(ポエルとか)じゃなくてビートニク関連の方。使えないB反をセントバーナード犬の寝床にして5年、といったツラ。ざらっとして丈夫で、生地端がビロビロと尖って・・・ゴザじゃねえかこれ。どうした。Primitive Technologyですらもうちょっとマシなゴザ織ってたよ。

この生地はある日、関西の生地屋で見つけたもの。用途として想定したのは鞄など。目付はだいたい800g。本来用途は「体育館のシート」。見た感じは絨毯。服屋に持っていったら「・・・畳?」と言われ、以後は畳麻ジャケットとして扱われた。

糸は太く、綱…?生地は厚く硬い。

ダークブラウンへの染色工程を経て毛羽が程よく立った。

柔らかくなったかと言うとそうでもなく、さらなる強化をなされた。鍛金されて強くなったハガネの剣。バイキルト。

ムラがおどろおどろしい印象を加える。漂うアウトレットワゴンセールの製品染B品感。

仕立ては薄い接着芯、ミシンでコバステッチ。

スーツ工場のラインにこんな生地流れてきても迷惑でしかないと思う。おや、鞄の帆布かね、犬印鞄製作所はお隣さんだよ、こちとら高齢者ばかりでウーステッドしか受け付けないよ…え、コバミシン?は?接着芯?えこれジャケットにするの?おたく、漁師さん?冬場の日本海のマグロ漁船上でディナークルーズでもするの?

ちなみに以前にはコート用のカシミヤをぶち込んで熊の抜け殻みたいなジャケットも作ってるので、もう工場の人も「またこの狂人かよ・・・」と思ってるかもしれない。

2釦でツーパッチ。袖釦、フラワーホールは無し。フラワーホールを手縫いでお願いしようかと思ったけどさすがにイジメでしかないのでやめた。

舟形ポケット、しっかりと立体的になってるのを見て笑ってしまった。人体の丸みに沿って云々って話はこの生地にも生きている。のか?

裏地はこの店の十八番、SAP。もちろん改修費5000兆円のERPじゃない。サップという生地。

夏用の薄手で柔らかいポリエステルで、清涼効果がある。レディースでよく使われる生地だ。

そんなたおやかな生地が裏地で、表がクソ重い畳。内柔外剛。っていうかこんな生地で作っておいてわざわざ清涼を求める気がしれない。ビッチズ・マリアージュ・ブラン。

ちなみに、あまりにも重すぎて巨大化したらしい。店によれば納品時にハンギングしておいたら袖丈も着丈も長くなったと。胴回りもデカい。ほんまや寸法が2cm位デカくなっとる。何これ呪われた日本人形じゃん怖い。最高。通常はそんなエピソードを聞いたら作り直しとなるのかもしれないが、私はご存知の通り倒錯者なので発奮し、是非そのままでと受け取った。ていうかこれ以上工場から目をつけられたくないし。この後タンブラー乾燥してみるという楽しみまであると思い、血塗られた盾を装備して100回戦うコースを選んだ。

ところで以前この店ではコート用のカシミヤ100%でもジャケットを作っている。


熊の抜け殻。

当たり前なのだけれど、着心地で比べたらカシミヤのものの方が全然良い。畳麻のジャケットは重いし、裏地を突き破って出てきそうなくらい生地端の主張が強い。 ただ、着心地が悪いという表現ではなく、「しんどい」、という感じだ。上等。

傍目には染まった柔道着にしか見えない。たぶんコーデュラナイロン並の強さはあるので発狂した妻に包丁で刺されても大丈夫。

一体いつ着るんだろうかと思ったが、出番はあるな、と安心した。

安心とはいったい…?