春。
「木の芽時」といって、ちょっとおかしな人が増える。
したがって、仕事が通常の流れとならない場合もある。
そんな時はショップも「木の芽時」な独特の品揃えになることがある。
去年の春。
挑戦したいがちょっと普通には着られないような・・・と思っていたら
「インドの伝統的な服装ですよ」と言われキュンとし、
しかもツイッター上で誰かが呟いたりしてキュンとし(欲望の模倣)、
その袖長シルエットが呼ばれているようでキュンとし、
買うか・・・買うまいか・・・としているうちに消えた。
これ。
というわけで「次に俺の前に現れたら…抱くぜ」とか大正ハードボイルドな決意を胸に抱いていたら、
さらっと現れたので、もうー抱いちゃうーと財布をぶん投げたわけです。
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まあインドのアルチザン系ブランドらしいですね。
内容?
面倒だから高橋さんとこのこれみてくれない?
ニューデリーのファッション学校を出て賞を色々獲ってるデザイナー。
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まあ総手縫いって別にセンツァマッキーナ(機械を使わない)じゃないだろ・・・と思ってたのだけど、
襟以外はマジで手縫いだった。
それともはしご縫いの機械とかあるのかな?
いわゆる「ナポリ仕立て」というのは、何故要所要所を手縫いで甘めにしてあるかというのは二つあると思っている。
①手縫いの甘さによりある程度の動いた時の猶予を生み着心地の良さに繋げる為。
②無理なテンションがかかった際に「縫い目がほつれる」ことにより生地が破壊されリビルド不可となることを防ぐ為。
しかしこのシャツは少し事情が違う。
究極の手仕事の総和なのだけれど、ラテックスも真っ青の極薄生地である。
こんな生地をはしご縫いで仕上げるなど、手縫い以外あり得ない。
そして手縫いだからこそできる、おかしなパターン。
このシャツは「シームレスショルダー」とも言われる。
肩の縫い目が無いのである。
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これは肩と袖を後ろから。
写真だとわかり辛いが、袖の継ぎ目は肩の上あたりで右の襟へと流れる。
つまり左肩・右肩が別パーツのように継ぎ接ぎされている。
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これは前からの写真。
なにを思ったか、袖の下は脇部分から袖先へ2枚接ぎ。
ということで袖は前身頃から袖先までの1枚と、下部の2枚の計3枚接ぎ。
そこまで動体を考えているのが効果的なのかはともかく、いやはやとんでもないシャツである。
ちなみに肩の縫い目があたらないのはストレスフリーではあるもののそんなに快適か?といった程度であった。
さて、実物を見てもらわないと説明が難しいこの狂った一品。
もう透け透けで恥ずかしいわ、壊れそうで怖いわということで昨年は全然着られていない。
今年こそ、乱立する木の芽に紛れてワンオブとなろうではないか。
木を隠すなら森の中。