カナダのシャツだよ。セロだよ。

復刻版というものに特段は興味が湧かない。湧かないが、ただ「MADE IN CANADA」って何だろう、と。

カナダはwings+hornsとかレイニングチャンプとかのニット地のブランドがあるイメージしかなかった。カナダで欲しいものと言えばアークテリクスの軍・法執行機関用のLeaf位。このSERO、 アメリカのブランドを復刻してカナダの工場で作る、と聞き興味を持った。

SEROは当時価格が安かった上、BDシャツにしては細身の出来だったので、タンスの肥しになるかもだけれどいっちょ買ってみようというノリで買った。数年。肥しどころかクローゼットの海洋深層水として箪笥海溝最深部にて深い眠りにつくことに。

時は流れフリマに出すものを探していたその時。しわくちゃになったnest robeとともにサルベージ。ペラペラで縫い目も粗いので絞り洗い。その影響で刻まれた粗めのシワがいい感じ。と思い込みこれがアメカジなのかなと勘違い。

アメリカのコネティカット州のニューヘイブンにあったSEROの製造販売所だが、当時はイェール大学生の御用達だったとか。97年に倒産し、2010年に(たぶん日本企業の誰かのおかげで)復活。カナダ製になった時は13,000円位になったのに、その後になぜかアメリカに工場を戻し値上げ。今はどうやら値下げして日本で縫っているとか・・・?もうなんでもアリ。当時いったい大学生に何が評価されてたんだ?

INDIVIDUALIZED SHIRTSと違って、襟がふにゃふにゃである。このよれよれ感。

カナダって、勝手な解釈だけど、ポートランド風の「チルい」っていうか、リラックスした気張らない雰囲気を持った国としては先進だと思っている。良く聴くロスシルってアンビエントアーティストがいるんだけど、彼がドラムをやってたインディーバンド、デストロイヤーの「Kaputt」ていうアルバムとか今でいう「チルい」のど真ん中みたいな感じだし、ほらピアニストのゴンザレスなんて名前に「Chilly」って冠ついてるでしょ。その元カノのファイストなんて「チルい」が過ぎてスタバでガンガン消費されてますやん。ジョニ・ミッチェルですらスタバでかかる時はポスト森ガールのソイラテの御伴の感じが漂っている。スタバと言えばアーケード・ファイアを最近聴かんのは草食男子の衰退だろうか。そうそう、国民的と言えどニール・ヤングはスタバで聴いたことが無い。さて、良く聴くティム・ヘッカー(ぜんぜんチルくない)も含め、上記の連中みんなカナダ人。チルさの先進国なんだよカナダ。チルいからイケメン首相がもてはやされて、もうインドで支持率がチルでしょ。トレンドに敏感でいらっしゃるの。

ガーっと縫う。なんも語ることねえ。力釦だけはさすが丁寧な暮らし。

ザラザラした生地感が気に入っていて、洗った時はあまり叩かずにバサリと乾かしている。それをTシャツの上から引っ掛ける位が丁度いいシャツなんでしょ。ていうかアメカジのシャンブレーBDシャツってそういうリネンシャツっぽい着方しか知らない。アメカジって書くと小汚いオッサンが着るイメージなんだけど、なんかカナダ製ってなると、いかにも「起き抜けにまず洗いざらしのシャツを着ますね」とすまし顔で言う舞台系俳優が好むシャツ、みたいなイメージになるのは私だけか?

以前これはデザインやってる人と話したんだけど、「こなれ」とか「リラックス」とか「ヌケ」とか言ってる時点で気張っちゃっててしゃらくせえ、今はもう「ダラダラする」ぐらいが適切。ってさ。それくらいエフォートレス全盛の世ではリラックスが消費されまくってる。

チルい、とかもその類。要するに我々はネガティブな方法、「~~ではない」でしかアイデンティティを獲得できないのだから、横文字で構築されたレッテルから逃げ続ける、厄介な意地を守る人間なんだ。

全然チルくねぇな。服が好き、とかもそのうち老害扱いされんのかな。