クローゼットの完成を妄想することは服好きの重要な趣味である。このサイトを見てる人などは一日中考えていられるだろう。私の場合は性格がねじくれているので、不均衡や未完成の状態、動的な状態が好きなのでクローゼットが完成する事はない。完成を妄想することよりも「最後の服」を考える。
明日が人生最後の日だとした時に、何を着るか、という事。
まだ久米宏氏が担当していた頃のニュースステーションの番組内に「最後の晩餐」というコーナーがあった。久米さんがゲストを相手に、「明日が地球最後の日だったら今日、何を食べますか」という質問をする企画。
ジャイアント馬場は「大福」。いかりや長介は「しらすを大根おろしでさっと醤油垂らして炊きたてのご飯で」。樹木希林に至っては「明日死ぬとわかっているのなら、食べない」。
私は、白いご飯と味噌汁、あとは漬物か焼き魚。そういった和定食が食べられれば特にこだわらない。ジョブスがイッセイミヤケのタートルネックを選ぶように、最後の日であれば自分にとっての普段の上質なものを選び、そこにリソースを割かない。
割くべきは他にある。何を着るのか、である。
服好きなら最後の衣装はこれ、と決まっているのでは?と思う方もいるかもしれない。ただ、服の組み合わせを考えて取捨選択するのが好き、服を細部までしげしげと眺めるのが好き、高い服を次から次へと買うのが好き、などなど多種多様の服好きがいる中で、私は比較的服の組み合わせを考えるのが好きな方である。しかも出来るだけ具体的にTPOを踏まえる癖がある。
なので、こういう状況であればこの組み合わせだろう、という妄想をして過ごす。
例えば、最も可能性がある病院の床。老衰や大病や事故により、余命が一日と宣告された朝、自由に動けない体。最後に手術やら介助やらが必要になるだろうし、服を剥ぐ時に「めっちゃいい生地だな…なんなんだこいつは…」と思わせたいので南シャツのスーパーリーバとsmooth dayのコズモラマの併用に、Marc Jacobsの50万パーカーだ。
何かの異常な天災に見舞われたとして、極限状況下でせめて家族と最後の時を過ごす為にあがく必要があるのであれば、wool&princeのウールシャツに履き慣れたジーンズ、Dannerのケブラーライトを履いてNorwegian rainを纏うとか。
黒点がどうので極寒に見舞われ死ぬのであれば、いつもの良いスーツでも着てウイスキーでも飲んで暖を取りたいのでLUIGI BORRELLIのシャツにAlfonso siricaのスーツ、Tailored By Mr Smithのコートを羽織りJ.M.Westonの641を。
死刑なら最後に絞首されぶら下がるシルエットを出来るだけそれっぽいものにしたいので、デカ目の服がいい。まず尿漏れしても見えない黒くてデカいボトム。Carol Christian poellのドローコードパンツとシャツにDANIEL ANDRESENのデカいニット。死体はたぶんブーツ履いてた方がサマになるし、F.lli Giacomettiのブーツ。
おや?するとパンツはあれとこれと…これだけで良くないか?しかし一方でこういうシチュエーションの場合のパンツが無いな…。いや、無いのはおかしいから、そしたら…
かくしてワードローブの再構築は進む。
最期の日に何を着るのだろうかと想う時、もしも着たい服がいま手元に無いのであれば、まだまだ大枚をはたいて服を買わなければならない。
大丈夫、まだたっぷりある。とことんどん底まで、掴んだその手を離すな。BOSSも言ってる。
ホリエ
ベンガル様
ご返信ありがとうございます。
なるほど。
26歳で未だ持っておりませんで、何を選ぼうか迷っていました。参考にさせて頂きます。
bengal
ホリエさま
いつも読んでいただきありがとうございます。
礼服と言うと冠婚葬祭の服という意味でしょうか?
正礼装・準礼装は持っておらず、平服はトゥモローランドのウーステッドの黒のMTMスーツで賄っています。
個人的にはルールを踏襲しており且つ良質な(シワが残らない、フィッティングを攻めすぎない、派手なディティールを選ばない)オーダースーツであればどこのものでもよいと考えています。
ホリエ
楽しみにブログ拝見しています。
最期の装束、というタイトルに少し関連して、礼服(特に喪服を念頭に)はどうされてますか?
bengal
Cartier Bressonさま
その時、オーバドゥとかラペルラかもしれませんね。
Cartier Bresson
その時、下着は純白のシーアイランドコットン製のトランクスorボクサー?