「とにかく上手」なリングヂャケットナポリのシャツ。

なんかフランチェスコ・メローラ以降、手縫い系ばっかり書いてる気がするな…。

 

以前チリエッロのシャツを買った時、柔らかいジャケットに合わせるのには最高だなと思っていた。ので、ガイオラのジャケットなんかを買った。

しばらく後、青山のリングヂャケット店頭で見かけたオリジナルラインのシャツは、まさにそんな感じで。ちょっとググってみたら奇しくもチリエッロ製だという噂で。丁度そんな時に手元にボメザドリの柔らかいスーツがあって。そんなこんなで。あれよあれよで。

でもカッタウェイだからしばらく封印したのち、最近また引っ張り出してきた。

手縫い箇所がどうとかよく言われがちだけれども、このシャツの特徴は何と言っても襟の雰囲気と型紙。

特徴的というか、よく考えて作られていると思う。

 

確かに、このボタンホールとか、身頃の縫製線の細さとか、袖付け、釦付け、ヨークの星縫い、カンヌキ、色々ハンドならではのディティールは語るに尽きないのだけれど今更そんなこと語ってもしょうがない。

その辺だけで勝負するならイングレーゼで十分。

 

カッタウェイだけれど、襟芯は薄くて柔らかい。台襟も羽根も完全フラシで接着無し。

ほぼ無しに近い薄さなんだけれど、無しではない。柔らかい芯というとタイユアタイを思い出すが、台襟・羽根共に片面接着で薄い生地に柔らかい芯のあのスタイルとは全く違う。このツイルの生地はある程度コシがあって芯と同じくらい。不思議だ。カッタウェイでこの生地にこの芯ってありなのか?とはじめは思った。

ところが、これが芯無しのジャケットとスフォデラータのネクタイに合わせるとなると落ち着く。落ち着く、というのは、タイユアタイのように羽根が泳ぐようなスタイルにもならず、一見カタギのちゃんとしたシャツに見えるのだ。だから、そういうものが得意のリングヂャケットが作る必然性があったのだろう。

 

ごりごりにマニカカミーチャである。

いせ込みは上に大半、脇下に少し。

でもこの中厚の生地だと厭らしさはそれほどない。

 

ダーツは取らず、でも身幅は細い。ヨークのギャザーは細かめに。リングヂャケットながらレスレストンほど控えめではないのはナポリ製だからだろう。バックダーツが無い点からもナポリのモンテサーロと同じ。

典型的なナポリのシャツというと、前回のボナマッサみたいな芋っぽい太さがあるが、型紙指定は日本から、という事でスマートな仕上がりで、太すぎず細すぎず、それでいて腕回りはすっきりしている。

また、求めるものによって発注先を変えているのだろう、ブリティッシュなテイストを取り入れたものなど、多様な襟型・スタイルがある。それらが大抵3万円台なので、セレクトでそのブランドを買うのとほぼ等価。要所要所にしっかりとこだわるリングヂャケットの注文に応えたものであることも踏まえると、これはコスパが良いと考えていいだろう。

もはやスーツ屋ではない、紳士服屋リングヂャケット。なんだか、紳士服関係全般に強くこだわってプロダクトを作る鎌倉シャツを思い起こす。