元祖ダッドスタイル。高品質で上品な生地を使ったデカいパンツとデカいシャツ。MADE IN ENGLANDリバイバルブームを踏襲したブランドと言えば、このe.tautz。

もともとは歴史のあるパンツとカジュアルウェアのブランドだった。場所は衣料激戦区、オックスフォードストリート。開発したニッカボッカが評価され、チャーチルに買われる一方、19世紀末に手ひどい火事でダメージを受けてしのぎを削っていた所、1968年にサヴィル・ロウの老舗ビスポークテーラー、ノートン&サンズに買収される。


さて、今のデザイナーは40代後半のパトリック・グラント。給料を全て服に突っ込むウェルドレッサーで、フルビアードの髭に無地のタイドアップスタイルがよく似合うし、何よりカジュアルスタイルもヌけていて洒落ているおっさん。ファッション好きなエリートで、オックスフォードでMBAを取得しつつも「バーバリー再生の手法は他のブランドで再現できるか」という論文も書いている。2005年に前述のテーラー、ノートン&サンズの売り出し広告を見つけ、ビビッときたらしく、車と家を売り払って会社を買い取ったとか。2010年にはブリティッシュ・ファッションアワードで賞も獲得している。

このシャツではワンポイントになっている、ロゴに使用されている狐。この狐は創業者エドワード・トウツのモットー「Follow」を意味するようだ。絵柄の意味はわからなかったが、鞭や狐はハンティングスポーツに関連するブランドであったことを思わせる。

メイドインイングランドを付加価値として評価されたブランドということもあり、英国製ディティールが息づいている。

襟は全てフラシ。加えて襟のステッチは端から6mm。プラケットフロント。やや野暮ったい印象を抱くも、ヨーロッパのシャツとしては中庸だろう。
「フラシ襟でプラケットフロント、ステッチ6mmの英国製シャツ」という方式を考えると、ジャーミンストリートのターンブル&アッサーを思いつく。イギリスのスタイルとしてこれが王道なのか。まさか工場が同じではとかも考えたが、e.tautzの前立て巾は32mm。T&Aの31mmからずらして作る意味もないだろうし、コストを考えると現実的ではない。違う…と思う。

ガゼットはターンブル&アッサーに比べて大ぶりなものが内側についている。同じ5角形ではあるが大きさ故に少しカジュアル要素を感じる。その辺はハンティングに由来を持つブランドだからだろうか。

イギリスのシャツらしくスプリットヨーク。さらに中庸な仕様と勝手に考えているサイドプリーツ。当然マシンメイドなので英国らしいかっちりとした袖付け。ボタンは白蝶か高瀬だろうが、とくに変わったことはしていない。変に技巧を凝らさず、上品な仕上がりだ。

e.tautzは、パンツで大成したブランド。デザイナー曰く100回洗ってから真価を発揮するミリタリーグレードの極太ツイルチノや、コアフィールドジーンズなどが良く売れている。トレンドに左右されない高品質な定番アイテムを英国製で作り続けるブランドとして評価されている。(そういえばbespokenもう無くなったのか?)

シャツに関して言えば、T&Aの記事でも書いたけど私はプラケットフロントがどうしても苦手だ。落ち着かない。ビシッとアイロンをかけるために糊を引いちまうかと思ったけれど、洗濯糊の感触が好きではない。アイロンワークで何とかしようとしても(特にポプリンは)着用中に浮いてくる。自分は比翼のシャツも同様の理由で苦手なので、フレンチプラケット(裏前立て)が正しいと考えている。

プラケットフロントはもともとの出自がプリーツフロントであることからドレス寄りであるとする考えもまだ残っているものの、見た目でスッキリしているのはフレンチフロント。ボタンダウンのオックスフォードシャツのディティールの一つという認知もあることから、今やディティール単体でドレスかカジュアルかを判断することには懐疑的である。

という事で私はポプリンやブロードのプラケットフロントのシャツについて「こういう時良いよ!」という対案、どなたかないでしょうか。