no.200 choya shirt 蝶矢シャツのCollection For Pitti UOMOラインのシャツ


 
 
今まで様々なブランドのシャツを取り上げてきたけども、飽きっぽい自分がここまで長く続いた事に驚いている。またこんなブログをよく皆さん見ていてくれたなとも思う。写真主体のブログはコーディネート・着用画像とか、使用に伴う変化を定点観測で見るとかそういったコンテンツが今は需要あるはず。
 
なので、皆さんは変t…お目が高い方々です。ありがとうございます。人様向けのコンテンツを意識してないんで敬語使わないんですけど、突然敬語で書くと手が震えますね。でも今後はより社会的になろうと思います。手始めに今夏はプリントTに挑戦します。押忍。
 
以前シャツにハマったきっかけはイタリアのボレッリであることを前にお話しましたが、もう一つのきっかけはここ、choya。
 
数年前の話。長野県は佐久市原の工場。国内シャツ工場のうち、こだわっているとされたブランドの製造ラインを見たかった、そんな気軽な動機で訪問を許してくれた当時の担当の人には今も感謝している。
 
そこではイートンハンガーシステムで運ばれてくるシャツを地元の主婦さん方々が手慣れた手つきで縫い上げており、機械が轟音をあげつつも清潔な環境だった。
 
当時、蝶矢シャツは綿100%のノンアイロンシャツ生地を独自開発で販売しており、名を「アポロコット」と言った。冷蔵庫で保存して縫製後に焼き上げるシャツ。その話を聞いた時、日清紡の化学技術を用いて合理的に勝負する会社なんだろう、恐らく徹底的に人的資源を最低限にし、属人性を廃し、フローが効率化・機械化されているのかな、と思っていた。ブランドではダンヒル、ポールスミスにはじまり、三陽商会のマッキントッシュやプリングル、フェアファクス土井縫工所の仕事も請けていたようで、商品力の評価が高い。検品能力も高いので装置とオペがバキバキに整っているんだろう、と。

ところが工場を見て話を聞いてみると、また違った印象を受けた。 蝶矢シャツは布帛縫製1級・2級技能士がゴロゴロいる。それほど技能を持った人間がおり、研究開発に暇がない。 工場ではベテランのパタンナーが様々な手法を見せてくれたが、面白かったのは三度表裏を縫って袖付部の縫い目を1本にした仕様のもの。工程がかかるが、パタンナーはさも楽しそうにやって見せてくれた。本当に縫製が好きな人なんだろう。今回、トランクショーで接客をしてくれた方も、生地のプロフェッショナルで、新疆からエジプトまで詳しく繊維事情を把握し、日本の生地工場に精通している。生地から製造工程の話まで、楽しそうに語っておられた。
 
たぶん、みな本気でシャツ(に関する様々な技術分野)が好きなのではないだろうか。
 
私のシャツ熱が加速したのはここからだった気がする。薄い木綿の布なのに、複雑なパーツの多さとバリエーション、平面の組み合わせから生まれる立体、そして静謐にしなやかに垂れ下がり、すぐに汚れて擦り切れる、吹けば飛ぶような儚さ。みんな年中問わず着るくらい身近なのに、特に意識もされない。でもつくりによってここまで違う。更にそんな一儚い存在に情熱を注ぐ人達がいる。


工場に訪問した数年後。2014年の夏。choyaが解散する、というニュースを見た。
 
その秋には同じシャツの会社である大阪の山喜にドレスシャツ事業(高山CHOYAソーイング株式会社)を譲渡し、翌年には営業を終了。山喜の傘下で鹿児島と信州の工場は残ることとなった。

私が行った工場は残ることにはなったのだが、ショックではあった。一方で心のどこかでさもありなん、とも思ったのだ。そもそも繊維業・アパレル業が苦境にある中、事業として見た時、シャツの販売を今と同じ方法で続けることができるのか。売れる服と良い服は今確実に別物である中、売れる事を信じて良い服を追求する、という事を続けていて良いのか。
 
そう思っていた。
 
ところが過日、Mr smith parisがトランクショーをやるっていうので行ってみたら、おや、山喜さんの傘下になったchoyaさんがトランクショー?なぜにトランクショー??
 
と思ったら、全技術をさらに研鑽し、生地も縫製も最高レベルまで持っていき、今度は逆輸入を目指してPITTI UOMOを攻めている、と言うのである。
 
度肝を抜かれた。オーダーした。
 
 
 
 
 
どれだけ凄いか書いていたらキリがないので詳しくはリンクを張ることにする。このCOLLECTION FOR PITTI UOMOのレーベルのディティールはここに書いてある
 
 
とりわけ特殊な仕上げが肩回りのこれ。
 
これが表で、
 
裏。
 
世界初、自社改造の特殊ミシンによる超低速無テンション手縫い風スクイ縫い袖伏せ。 狂っている。手縫いの粗さを排除し、手縫いの柔らかさを得る。
 
何度か話をしているけれど、手縫い袖付けの柔らかさというものはわかりづらい。同じ生地・パターン・寸法で作って初めてわかる程度ではないだろうか。それも神経質にならないと感じられない。リングヂャケットが言うように、手仕事へのオマージュや、見た目、自分だけの密かな楽しみ、が大きいのではないかと思う。
 
 
バンドカラ―もかなり良かったのだが、オープンカラーの白にした。日本の老舗シャツ屋だし、昭和の開襟シャツの風味が欲しい。小津安二郎について中の人も書いているようだし。
 
柔らかくもハリのあるタイプライタークロスに、冷ややかな白蝶貝釦、適度に柔らかく肌も生地も傷めない芯地、ごく精緻な運針。文句がない。
 
私はてっきり会社清算の際に方向転換して売らんかなに進むのかと思っていたが、しっかりとchoyaの魂は生きていた上に、よりこだわりの方向にシフトしていた。
 
未来は俺等の手の中。とことんどん底まで。経営的にどうか、という話などもう意味がないだろう。私も信念が強い方ではないで、どうこう言う資格はない。こういうシャツが売れてほしい、と思うだけだ。たぶん、marolを買ったBO氏も同じような思いだったのではないだろうか。だが残念ながら買収するほどの財力は私にはない。だから皆さん、見かけたら少しでも手に取って見てみてください。くらいしか言えない。いつになっても無力なものですね。
 
 
 
以上、今までだらだらと書いてきましたが、もうこのシリーズ(なんのシリーズだったんだこれ?)はやめて、この長ったらしい文章も変えていきたい。ブログ自体も色々と。太字とか改行使いはじめるとかそういう事ではなくね。
 
とにかく、今まで飽きずにここまでよく続いたものだと思いました。ありがとうございました。
 

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5 Comments

  1. いつも楽しく拝見させていただいております。
    私がこのブログに会う数年前まではシャツにそこまで造詣を深く持っておらず大変勉強させていただきました。
    また芝浜の引用やkiasmos、イスラムの祈りなどシャツだけに留まらず様々なジャンルの見識もこのサイトで知ることができ感謝しております。
    今後も楽しみにしております。

  2. H様
    ありがとうございます。
    蝶矢さんもこの状況下厳しいかと思いますが、もし見かけたら着てみてくださいませ。

  3. bengal様

    美しいシャツと文章をいつも楽しみにしております。

    20年前、シャツに興味を抱きはじめ手に取りました蝶矢シャツの新しい姿を知り嬉しく思います。

    あの頃のシャツがどのように変わったのか、少しワクワクしながら、探してみます。

    不易流行

    bengal様の次の創作もまた、楽しみにしております。

  4. まるすけ様
    拙いブログですがありがとうございます。
    choyaさんは廉価なシャツから今回紹介した技術を集めたシャツまで幅広く展開されているので、ぜひ色々見てみてください。端正なシャツですよ。

  5. 初めまして、いつも楽しく拝見しております。私も今、色々とシャツを試している最中で、bengalさんの投稿は非常に勉強になります。
    前回、そろそろおしまい、のようなことを書かれていたので、最後?にどのメーカーのシャツがくるのだろうかと楽しみにしておりました。

    そんな中でのMade in Japanのシャツ、なんだか意外だなと思うと共に嬉しくもなりました。choyaのシャツは手に取ったことがないので、見かけたら手に取ってみます。

    今後も楽しみにしております。

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