アメリカのトータルブランド、ブルックス・ブラザーズ。

今回はジャック・ケルアックの話を突然したりはしないし、リメイクされたあの映画の事について長々と書き連ねた挙句に同作家の「冬の夢」のデクスターのよくわかんない欲望わかるわーみたいな大いなる脱線をしたりはしない。

以前もシャツを紹介したが、今回はオウンメイクというライン。

このシャツ、メインラインと違って高いのだけれど、売れ残った結果アウトレットで確保されるに至ったのである。

今回はこのボタンダウンシャツをちゃんと本流に習い「ポロカラーシャツ」と呼ぼう。

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オウンメイクは、アメトラ一筋何百年とやってきたブルックス・ブラザーズが、今一度オールアメリカンメイドを目指し、自社工場で作っているラインである。

シャツは、80年代終わりにブルックス・ブラザーズが買収されて以後から使われている、「ガーランド」という工場で縫われているらしい。

Tシャツのおばさま達がハンガーシステムで流れてくるシャツを黙々と(ガムを食べたり悪態をつきながら)JUKIミシンで縫っている。

なるほど、どこの国もシャツ工場は似たような設備とレイアウトのようだ。

 

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背中から。

襟裏のボタンとロッカーループとスプリットヨーク、ボックスプリーツ。

以前ファッション界の大御所から「襟裏のボタンのディティールの名前はなんて言うんだ」という問い合わせが入ったが、バックボタンでいいのでは、と返した。

ブルックスの店員によれば「サードカラーボタン」なんていう説もあるのだが、本当だろうか。

ともあれこのバックボタン、ブルックス・ブラザーズによれば、元々はネクタイの滑り止めだったらしい。だが60年代後半、ネクタイの幅が大きくなるにつれて、ブルックス・ブラザーズがシャツにつけるのをやめ、そのマイナーチェンジを残念がった当時の顧客はまとめて買い込むまでに至った、という忠誠心高い逸話も残っている。

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身頃の裾の裏を見てみると、脇縫いは二本巻き縫い。

アームホールも同様のようだ。

この種のガゼットを解体したことが無いのでわからないのだが、某シャツ工場のパタンナーさんは「結構面白く出来てるんですよあれ」と言っていたので、いつか見てみたいとは思っている。

確かに解体しないとこの三角形の生地の正体がつかめないようではある。

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フロントの裾、6番目のボタンの部分の特徴的なアーカイブ仕様と、袖のギャザー。

個人的には、今まではタックよりギャザーのほうが「人の手仕事」という感じがあって良いと思うことがあったが、結局効能としては大きく変わるわけではない。

 

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さあ、襟である。

8.6cmという黄金率を守っているといわれる襟である。

ブルックス・ブラザーズの醍醐味、それは襟の曲線、つまりボタンを留めた時の襟羽根の曲がり具合である。

インディヴィジュアライズドシャツは第一ボタンを外した時に真価があるが、ブルックスはどちらもイケる、と感じている。

オウンメイクはフロントが6ボタンのため、第一ボタンから第二ボタンまでの間隔が4インチほどと広く、第一ボタンを開けると結構大胆に開いてしまうのだが。

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襟の美しいロールはブルックス・ブラザーズでは「フルロール」と呼ぶ。

このカギは、第一ボタンと第二ボタンを閉めた時の前立てに生ずるこの僅かな「ゆとり」、それとボタンの位置にあると思う。

 

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手持ちのアメリカンB.Dシャツが少なくなったため、比較できたのはアイクベーハーscyeをはじめ僅かだが、画像のように襟より内側に羽根を留めるボタンが配置されているのはブルックスブラザーズだけだった。

インディヴィジュアライズドシャツも、あのロールの形状からして恐らく内側なのではないだろうか。

さて、画像のメジャーがたわんでいるのがわかるように、この前立てのゆとりはなんなのだろうかというと・・・と書こうと思ったが、これ以上長くなるとツラい上に、そもそもブルックス・ブラザーズのメインラインを紹介していなかったので、そちらの回でまた改めて追求していくことにする。

アメトラの話、特にブルックス・ブラザーズの話となると、私より詳しい人が山ほどいるのでその方々が書いてくれれば良いのだが。